44.裏切り ページ45
「わざわざごめんね」
久しぶりに顔を合わせた彼女は心なしか、やつれていた
お茶を出すと言ってくれた彼女の言葉に甘えて、少しだけお邪魔することにする。初めて訪れた彼女の家は、純和風の豪邸でかなり呼び鈴を押すのに勇気が要った
執事さんらしき人に通された彼女の部屋は、一人にしては広すぎる10畳くらいの広さだった。なおかつ、意外にもsimple is the bestで必要最低限の家具しか置かれていないため余計部屋の広さが強調されていた。唯一の小物は何故か伏せてある写真タテとベッドの上に鎮座されているクマのぬいぐるみだけ
外装と内装との差が激しいなあと思いながら、落ち着きなくきょろきょろと辺りを見回していると、紅茶とバームクーヘンをお盆にのせてひなが戻ってきた
「ごめんね、何もなくて」
「ううん。意外だったけど、なんかひならしいっちゃひならしい部屋だね」
きっと結構な値段がするであろう香りのいい紅茶を口にしながら、思ったことを伝える
ひなは「物欲があまりなくて」と恥ずかしそうにはにかんだ
なんだか、彼女の笑顔を久しぶりに見たなあと思いながら、ここに来た目的を思い出し、鞄の中からプリントの束を取りだし渡す
「あ、わざわざまとめてくれたんだね。ありがとう」
「いや、ていうかごめんね。少し皺になっちゃった」
プリントの端ではなく、中央にできた皺を見つめながら先ほどの黄瀬の言葉を思い出す
いつになく怒っていたな……
無意識のうちに握りしめていた私の両手にそっと触れる優しい指
驚いて顔を上げれば、困った顔をしたひながいた
「何かあったの?」
あー、なんでそんなことを聞くのだ
何かあったのはそっちなのに……
まるで蜂蜜のような優しい彼女の言葉に、泣くのは自分ではないとわかっていながらも堪えきれなくなった私は泣いた
彼女の細い腕の中で、幼子のように声をあげて泣き叫んだ
14人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星蛍(プロフ) - せりさん» ごめんなさい!!まだ編集途中で10月に外しますので、少々お待ち下さいm(__)m (2018年9月28日 22時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
せり(プロフ) - 続編はパスワードつきなのですね…見る事は出来ないのでしょうか?とても面白いので続きが気になります (2018年9月27日 16時) (レス) id: 9c9e090c7f (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - きゅうさん» ありがとうございます! (2018年9月18日 7時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
きゅう - おもしろかったです! (2018年9月18日 5時) (レス) id: fb4f6b02b7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:星蛍 | 作成日時:2018年3月31日 14時