31.勝負 ページ32
一気に静まり返る教室。廊下にいる人も何事かとうちのクラスを覗いている
「な、なによ、あんたっ」
クラスの視線を集めているのもあるのだろう。居心地悪そうに眼を泳がす工藤さん
だが、その中でも水色さんに臆することなく強めの口調で文句を言う工藤さんは、ある意味肝が据わっている
そんな様子を気に留めているのかいないのか、水色さんは表情を崩すことなく、笑顔で話す
「私と勝負しましょう」
まるで「お茶しにいきましょう」みたいなノリで言う彼女に、最初は言ってる意味が分からなかった
だが、私が理解した途端、絶句した。慌てて紫原くんを見れば、彼は「あー、なくなっちゃった」と暢気にお菓子を食べている
工藤さんも理解したらしく、普段の(黄瀬に媚びるために)装っている可愛い声ではない、本性丸出しの絶叫をした
「はああぁぁっ?!」
「内容はそうねえ、勉強とスポーツ、文武両道でいきましょ」
「いや、ちょっと待ちなさいよっ」
「勉強は五教科で、スポーツの種目はそっちが決めていいわ」
「待てって言ってんでしょ!!」
工藤さんを無視して淡々を勝負の内容を決めていく水色さん
流石に工藤さんが可哀そうに思えて、水色さんの袖口を引っ張り止める
彼女はにこりとこちらに微笑んで、話をやめた。てか、絶対わざとだ……
水色さんもこんなことするんだなあ、と場違いにも思いながら二人のやりとりを見守る
「あんたいきなりなんなのっ?!」
「なんなのって、やられっぱなしも癪だからちょっとした仕返しだけど」
「仕返しぃ?」
怪訝な目で見るが、水色さんがちらりと私の右手首に視線を向けたので、昨日のことだと思い当たる
工藤さんもわかったらしいが、鼻で笑ってとぼける
「なんのことかしら?」
「あら、その年でもう老化が始まってるのね。病院にいったほうがいいじゃない?」
「んなわけないでしょっ」
水色さんが心底心配そうに言うものだから、思わず笑いそうになるが工藤さんに睨まれて我慢する
水色さんは心配そうな顔をやめ、今度は怖いくらい真顔になる
「この大勢の前でバラされたくなかったら受けるわよね」
まさに一触即発な空気に、あー、なんで巻き込まれたんだ私……、と遠くで思った
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星蛍(プロフ) - せりさん» ごめんなさい!!まだ編集途中で10月に外しますので、少々お待ち下さいm(__)m (2018年9月28日 22時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
せり(プロフ) - 続編はパスワードつきなのですね…見る事は出来ないのでしょうか?とても面白いので続きが気になります (2018年9月27日 16時) (レス) id: 9c9e090c7f (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - きゅうさん» ありがとうございます! (2018年9月18日 7時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
きゅう - おもしろかったです! (2018年9月18日 5時) (レス) id: fb4f6b02b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星蛍 | 作成日時:2018年3月31日 14時