色欲の公爵6 ページ8
「…スージーQ、君と帰り道に同行したのは、もうひとつ理由がある」
「…え?」
不意にシーザーは歩みを止め、スージーQの方を振り返った。すると、シーザーは不思議そうにこちらを見つめるスージーQの頬に、右手でそっと触れた。
「心配になったんだ…君の物憂げな表情を見てね。お節介かもしれないが、力になりたいと思ったんだ」
シーザーの瞳が、スージーQの顔を覗き込む。
その儚くも美しい眼差しを向けられて、胸がキュウ、と苦しくなる。
「…スージーQ、会って間もない俺にまだ心を開けないかもしれないが…どうかその心の内を聞かせてくれないか…?
君の辛そうな顔を見るのが、辛いんだ…」
スージーQの頬に触れていたシーザーの手が、するりと滑るように移動し、彼女の手のひらに重なる。
彼の声はとても穏やかで心地よい。
それなのに、胸の苦しみは収まるどころかますます強まっていくのは何故だろう…?
その答えはすぐにわかった。いや、心のどこかでわかっていたけれど自覚しなかっただけかもしれない。
__この苦しみの正体を認めてしまったらジョセフを…愛する人を裏切ってしまうことになるから。
「….スージーQ…?」
手の震えがシーザーに伝わってしまったのか、彼の声色はますます心配しているように聞こえた。
__もう、我慢できない。堪えようとすればするほど、胸に秘められた想いはどんどん溜まり、溢れそうになってしまう。
「…ッ…!!スージーQ…!!」
突然、スージーQはシーザーの胸元に飛び込んだ。目を見開きつつもスージーQの頭を撫でるシーザーは、彼女の目から涙が溢れていることに気づいた。
「…あなたのせいよ、シーザー……。あなたが…あなたがそんなに優しいから私、私…」
ダメだ、言ってはいけない。そう思っていても、一度出した言葉は涙と共に止めることは、もうできない。
「私…あなたのことが好きになってしまったの…!!」
飲み込むことが出来ずに言ってしまった、愛の言葉…。
しかし、スージーQの心に不思議と後悔はなかった。それどころか、どこかすっきりとした気持ちに満たされていた。
「……スージーQ…落ち着いて。とりあえずここだと人目が着く。…どこか落ち着いた場所で話そう。…2人きりで」
優しい言葉でスージーQに語りかけるシーザー。しかし、この時彼がニヤリと口角を歪めていたことに、彼女は気づかなかった。
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作者名:Choco | 作成日時:2021年1月22日 23時