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『…………』
目の前に並ぶ美味しそうなクレープ。
いちご、バナナ、生クリーム、チョコレート、どれもこれも大好きな物ばかり。
子供の頃に父と一緒に初めて食べたクレープ。
甘くてトロトロしたソレは、一口で私の大好物になった。
時計を見ると18時。
今食べて、晩ご飯を抜いたら大丈夫かな…。
「そんな悩むか?」
『ヒッ…!』
「ビビリすぎだろ」
『すいません…』
メニューを見て悩む私に、彼はこう言う。
食いたいやつ全部食えば?
そんな事したら、また子供の頃に逆戻り。
容姿などどうでも良いと言ってもデブスには二度と戻りたくない。
「どれ食いてーの?」
『いちごか…バナナ……』
「ん」
そう言えば、彼は店員に注文。
こんな事を言うのは申し訳ないが、彼にクレープ屋さんは似合わない。
彼の隣に私も似合わないけれど。
「ほら、先そっち食えよ」
手渡されたいちごと生クリームのクレープ。
彼の手にはチョコバナナ。
一口食べて眉間を歪めて「クソあめェ…」と呟く彼が面白い。
『美味しい…』
「ん、良かったな」
口の中で溶けるクリームといちごの酸味が絶妙で顔を綻ばせると、眉間に皺を寄せていた彼の顔が優しくなった。
次そっち、と当たり前のように食べかけのクレープを交換されて、当たり前のように食べる彼。
学校帰りに一緒に寄り道をする友人を持ち合わせていなかった私には初めての事で、彼が口にしたクレープに口を付けるには勇気がいる。
「食わねーなら、食うぞ」
『た、食べます!』
そう言ってパクリ。
うん、チョコバナナは間違いない。
「A、好きだよな、こんなクソあめェやつ」
彼に甘いお菓子が大好きだった事を言った事があっただろうか。
「何で食わねーの?好きなんだろ」
『……太ったらイヤだから』
「Aは痩せすぎだろ」
『昔…太ってて、それで……ちょっと嫌な事があって』
「………」
俯いて話す私の頬をフニっと摘むのは、竜胆。
"プニプニで気持ち良いのにな"
そう言って、もっと食え、と食べかけのクレープを私の口元に差し出すのだ。
眼鏡の奥に揺れる瞳とその台詞を、私は知っている気がした。
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きりまる(プロフ) - 推しが尊いお米さん» ありがとうございますー!!最初は蘭ちゃん落ちだったのですが…(笑)蘭ちゃんのお話も頑張ります!また、宜しくお願い致します(*^^*) (2021年12月1日 23時) (レス) id: 684e8f5b6d (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊いお米 - 見ました!!!竜ちゃん落ちあんまりない(気がする)から嬉しいです。私も蘭ちゃんにも幸せになってほしいし、他の作品ももっと見たいです!! (2021年12月1日 23時) (レス) @page28 id: 11fe216a38 (このIDを非表示/違反報告)
きりまる(プロフ) - 推しが尊いお米さん» はじめまして(*^^*)コメントありがとうございます!!更新遅くてすいません〜(汗)ラストまでアップしましたので、宜しければご覧下さい……!応援ありがとうございます………!! (2021年12月1日 19時) (レス) id: 684e8f5b6d (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊いお米 - 続きが気になりすぎます!!!!これからも応援してます。更新楽しみにしてます! (2021年12月1日 18時) (レス) @page24 id: 11fe216a38 (このIDを非表示/違反報告)
きりまる(プロフ) - HSさん» はじめまして(*^^*)コメントありがとうございます!もうすぐ完結予定です♪ (2021年11月30日 21時) (レス) id: 684e8f5b6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりまる | 作成日時:2021年11月16日 20時