六本木シンデレラ《灰谷兄弟》

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ちっちぇー人間が出てくるやつだろー？

それは多分ちっちぇー人間じゃなくて小人です。

美女が野獣になるんだっけ？

美女は野獣になりません。



下校時間を知らせる合図が鳴ってからも、私は蘭くんと一緒に図書室に居た。
相変わらず挿し絵のない本をパラパラとしながら、思い当たる物語を自分なりの解釈で話す彼。

随分と個性のある解釈に、警鐘を鳴らしていた筈の頭があっさりと解除してしまっていた。



『蘭くんがそんなにお話を知ってると思いませんでした』

「あー、ガキの頃になー」



誰かがそんな話をよくしてて勝手に覚えてしまったと言う彼。
頬杖をつきながら、向こうを眺める瞳は思い出の中の誰かを見つめているのだろうか。



「つーか、キスして目ェ覚めたら好きになるってどーよ」

『それは…』

「めちゃくちゃ気持ちいーキスだったりしてなー？」



そう言って私を見ながら赤い舌をチラつかせる彼に顔が熱くなるのは当然だった。



「オマエ、やっぱかぁい〜な〜、こんなんで赤くなんのかよ」



頬に触れる冷たい指先、唇に触れる親指と、顎に触れる指で軽く私の顔を持ち上げる。
視線を反らすも、こっち見ろの一言は先程までの声よりも低く、肩に力が入ってしまう。



『灰谷くん、止めて下さい…！』

「蘭だっつってんだろー？」

『すいませ…「兄貴！」



何してんだ、と現れたのは弟の竜胆だった。






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