破れた傘にくちづけ-動物図鑑-

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わかってた。

エースみたいな人に、ここしか居場所がないなんてありえない。

みんなここ以外に、ちゃんと居場所を持ってる。


お母さんも、お姉ちゃんもお兄ちゃんも。


ここにしか居場所がないのは、私だけで


だからここが無くなって泣くのは、私だけだ。




ちゅ、と音を立てていつも通りマーキングされた首筋がすうすうして、エースにしがみついたまま、私は泣いた。


しばらく私の頭を撫でながら、黙ってしがみつかれていたエースが頭の上で口を開く。



エ「Aは、どうしたい？」

エ「思ったことは、口に出して言わんとわからんのやで。普通は」



エースは詳しいことは何も聞かなかったし、私も話さなかった。


何も言わなくても、ただ慰めて頭を撫でてくれるエースにしか、涙を見せることができない。



ずっと、大事にしてきたものたちと一緒にここにいたいのに。ここが無くなったらどうしていいかわからないのに。


エ「…そん中に俺は入ってんの？」


うん。エースは空気だから。


エ「空気ってお前。Aはいつになったら俺を男として見んの」


「…あれ？私今口に出して言った？」


ていうかエース今なんて言った？


混乱している私を眺めてため息をついたエースは、またポンポンと私の頭を撫でた。


エ「ええか、俺は今から、番犬らしいことをする」

「急になに」

エ「お前がそうしたいなら俺が追っ払ったる。だからA」


エ「――命令して」





「私の、私達の家をまもって」






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