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マ「命を助ける代償に、自分の物を犠牲にしたから、契約が成立したみたいやねん」
マックはそう言って困ったように頭を掻いた。そんなのも見とれそうになるほどかっこいいとか何なんだろう。
「契約」
マ「そう。Aちゃんに何かあったら無条件で助けに行かなあかんし、まあ、一蓮托生、ちゅうやつやな」
見たところマックも困っていそうだし、私も別に望んでいないのに？
エ「そういうもんやないねん。本能やから逆らえへんの」
「ふぅん。大変なんだね。それで、私はどうすれば？」
マ「普通にしててええよ。危ない目に合わんといてくれれば」
そういったマックにエースが何か言いかけたけど、マックはちょっと鋭い目でエースを制した。
マ「…まあ詳しいことはおいおい。今日は契約が成立しとるかどうかの確認だけと思っとったから」
俺ちょっと中、整理してくるわ、と言って会場の中に入っていったマック。私とエースは廊下に2人になった。
「マックも何かできるの？」
エ「空間を操作できる」
会場の中にいたはずなのに目を開けたら廊下にいたこととか、そういう事？
エ「そう。あと俺らはみんな、人間の記憶も操作できる」
空間と記憶を操作できるってことは、血を吸ったりするのだって簡単だよねきっと。
咬まれたら死ぬのかな、どんな感じなんだろう。
そんなことを考えていたら、エースにそっと、手を繋がれた。
やっぱりその手は冷たい。
エ「アレの時みたいに気持ちいいらしいで」
「アレ？」
エ「そう。死ぬほど気持ちいいんやって。摂りすぎたらほんまに死ぬけど、俺ら小食やから」
そう言ってクスッと笑いながら、私を見たまま、捕まえた私の手を、舐める。その舌も、冷たい。
その目には、何かが浮かんでいて、私は、震えた。
さっき、赤ドレスの子は何て言ってたっけ。
「咬まれたら、吸血鬼になるの？」
エ「咬まれただけではならん」
す、と近寄ってきた耳元で囁かれる。
食べてるところって、欲望が出てる。たしか、そう言っていた。
エースの目に浮かんでいるのは、“欲望”？
エ「“美味しいものは美味しいうちに食べたほうがいい”」
エ「あれにも激しく同感」
エ「美味しい時に食べないと食べ物に失礼、やろ？」
あれ、もしかして、私、今、美味しそう？
エースがふ、と笑った気配がした。それは首のすぐ近く…。
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年7月6日 21時
