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車中では、ガムも私にいろいろな話をしてくれた。マックに聞けなかった、いろいろ。
先に吸血鬼になったのは“年上組”の3人で、そのずっと後で3人に転生させてもらったのが“年下組”の4人。
転生した年で老化は止まるので同年代に見えるけど、“生きている”年齢にはそれぞれだいぶ差があるらしい。
長く生きてきて時間を共有してきた彼らには、やっぱり家族みたいな絆がある。
ジャッキーも前に言っていたけど、一度吸血鬼に咬まれた人間は毒に侵されるので、他の吸血鬼の毒を入れると死ぬ。なので吸血鬼は不用意に人間を殺さないように縄張りを分けて生活していて、本来は群れないし、吸血鬼同士の接触もごくまれ。狩場が被らないように。
能力がある吸血鬼は、争いになればそれなりのリスクもある。
でもガムたちは転生した時からずっと一緒に暮らしている。喧嘩もしながら。
ガ「老けないイケメン集団は目立つからな。長く同じとこには住めへんし、たまに分かれて住んだりすることもあるけど」
「そう…だよね」
どっかに行っちゃうかもしれないってことか、多分、そのうちに。
ガ「心配せんでも、マックはAちゃんの事離されへんで。Aちゃんのために血断ってるくらいやし」
そしたらもれなく6人イケメンが付いてくるからな、と言って、ガムはまた私の手を取った。また流れ込んでくる穏やかな感情。この数日で、私達はだいぶ共鳴しやすくなった。
「僕の妻たちに会いに行ってくるわ」と言ったガムを車から降ろして(彼は「妻たち」に血を分けてもらっているらしい)、私はトッポのご機嫌を取るための献上品を探しにもう一度街に出た。
ついでに職場に寄って迷惑をかけたお詫びと、思ったより早く出勤できそうなことを上司に伝える。職場の人たちの記憶はジャッキーによって上手に改ざんされていて、私は足を捻って少し休んでいる事になっていた。さすがジャッキー。
途中マンションの前も通ったのに、私は自分の部屋に寄ろうとは思わなかった。
エイトは、あそこにいる人たちも含めて過不足なく私を満たしている。居心地のいい魔物の館。
何も、足りないものはなかった。
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作者名:きりん虫 | 作成日時:2020年7月6日 21時