破れた傘にくちづけ 2

3 ページ18

＊＊




遊園地での一件から、編集部は急に忙しくなった。

ぴーまんさんとは仕事上のメールや電話のやり取りが切れずに続いていたし、残業を終えてエイトに行けば誰かがいて、相変わらずお客さんの少ないbarのカウンターで過ごす日もある。
エイトのみんなは変わらず接してくれていた。


マック以外は。



マックは出会った当初に戻って、私を避けているらしい。

私はできれば会って話がしたいと思っていたけれど、エイトに行くといつもいなくて、いくら会いたいと思っていても私の前に現れてはくれなかった。



「怒ってる、よね…」

ア「すぐムキになんのがマックや、ほっとけ」

ジョ「もう貧血で白通り越してゾンビみたいな顔色やから、ぼちぼち根負けするし」



血を飲んでいないから。

私を咬んでから、マックは私の血しか飲んでいないはずだ。
でも、もしこのままどうしても衝動が抑えられなくなったら



「誰か他の人の血を飲んじゃうかもしれない…」


考えたくなくてbarのカウンターに突っ伏した。



放っておいていつか時間が解決する問題だというのなら、状況は圧倒的に私に不利だ。

彼らには、無限の時間があるのだから。








翌週、私はぴーまんさんの自宅に呼ばれた。

正直行くかどうか迷ったけれど、仕事だし私をご指名で、「来なければこっちから行く」と言われてしまってはどうしようもなかった。


できればエイトに近づいてほしくない。


物理的距離の問題ではないのはわかっていても。





.

4→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す