日日是好日 2

サボり常習犯の大倉君 ページ35

サボり常習犯の大倉君







私の城である保健室は、日中は不在時も基本鍵をかけない。


私がいてもいなくても具合が悪い子は待ったなしで受け入れなければいけないと思っているから。

ちょっとした薬とか生徒の個人情報とか管理に注意が必要なものも多くて、前任の先生は退室する都度施錠していたらしいし校長は私にもそうするように言ったけど、何とか説き伏せて日中は鍵はかけないことを許してもらった。


助けを求めてきたのに保健室が閉まってた、なんて最悪だから。





職員会議が終わって保健室に戻ると、奥のカーテンが閉まったまま揺れていた。
カーテンをめくってそっと覗くと、大きく盛り上がった布団の端にキレイな茶髪が見える。


「大倉君？」


大「…Aちゃん、何でわかんの」


「こら、ちゃんと先生って呼んで」


ちらっと布団をめくってのぞいたのは鼻筋の通った王子様みたいな顔。

なんでわかるも何も、最近彼はほとんど毎日ここに寝ている。




大倉君はサボり常習犯だ。


初めは「頭が痛い」とか「気持ち悪い」とか一応具合が悪いポーズを見せていたのに、最近ではもう開きなおったのかサボりだという事を隠そうともしない。


「ちゃんと授業に出ないと留年するんじゃない？」

大「計算してるから大丈夫」


計算してんのかい。


起き上がりながらふあぁ、と大きなあくびを一つしてググっと伸びると、乱れたシャツの胸元から意外とがっしりした胸筋がのぞく。



高校生の男の子って、なんかこう伸び盛りの若木みたいで眩しいのよね。

大倉君からはコアントローみたいな熟しきってない青い果実の匂いがする。



大「冬やから、眠くて」

「ちょっと前は“冬眠前だからお腹空いて”って言ってなかった？」


大「俺、クマやから」

「…念のために聞くけど、クラスでいじめられてるとか友達がいないとかじゃないのよね」


大倉君は私が言い終わる前に「あっはっは」と大きい口を開けて笑った。



大「Aちゃんはホンマあほやな。俺の事そんな風に見えんの？」







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