日日是好日 2

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全部駄々洩れか。

ぜんぜんおもんない。あとAが起きるからちょっと声押さえて。


大「『村上課長に認めてもらえるように』頑張ってんのがまるわかりで、いじらしくてもう。たまらんくなったわ」

村「こらえとけ、俺のや」

大「素直に認めんのかいな」


横「自分の上司としての判断が間違ってたことも認めなさいよ」

横「そんで冷静に扱えないんなら、外に出した方がいいと思うけど。他の課の方がよっぽど上手く使うわよ」


横子の非難は鈍器でぶん殴られるより重くてナイフで刺されるより鋭利で痛かった。


大変な仕事に向かわせんのも嫌で、イケメンの大倉と泊りがけの出張に行かせんのも嫌で、俺の目の届かんとこに行かせんのも会いたい時に会えんくなるのも嫌で。

俺が嫌やから、Aに「まだ仕事ができない部下」のレッテルを張って駄々こねてただけ。完全な私情。



横「私が課長になった時は私がもらうからね」

大「あ、横子さんその時はぜひ俺もセットでもらって」


横「いらん」





もう一軒行く前にトイレに行ってくる、と言って席を立った横子を目で追いながら、大倉がこそっと言うた。


大「横子さんはああ言うたけど」

大「Aちゃんが仕事ができてかわいい子になったんは、信ちゃんの手柄やから自信もって」


自信無くしとることまで駄々洩れかいな。だっさ。


村「なぐさめてくれんでもええで。ださいの自覚しとるから」


大「まあまあ。そんな信ちゃんもかわええし、レアなもん見れたわ。横子さんは俺が引き受けるから」

そこの頑張った子はちゃんと甘やかしてあげて、と言って伝票を俺に押し付けてさっさと荷物を持った大倉。


バタン、と個室のドアが閉まった瞬間。


「信五さん、かわいい…」


とつぶれているはずの彼女の口から聞き捨てならない声が漏れた。


村「おいこら狸寝入り、どっから聞いてた？」

「おみやげ、のあたりから」

ほぼ全部聞いてるやん。


村「かわいい、やなくてかっこいいと思われたいんやけど」


「普段かっこいいから、かわいいところが萌えるんじゃないですか」

「ふふッ、レアな信五さん見れた」



こっちのセリフや。

普段かわええから、かっちり仕事決めてきたとこに惚れ直したわ、俺も。レアなもん見れた。


口に出したら怒られそうやから、俺は「タクシー来たら帰るぞー」と声掛けて伝票を持って個室を出た。



続きは、家でゆっくり。




終

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