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子供の頃の忠義は、弟のようだった。
感情の起伏が激しくて、自分の価値をわかっている。わがままを言って通るところと、そうじゃないところをきちんと見極めていて、祖父には決してわがままを言わなかった。その分、私にはわがままを言いたい放題。
私は本来は人に甘えたりすることは苦手だし、受けた恩はきちんと返さないと気が済まないほうだ。
だから元婚約者に「かわいそうだと思って拾ってやったのに」と言われて何も言い返せなかったわけだけど。
忠義には現在進行形で身に余るほど良くしてもらっているし、並べてみればその重さでも量でも貸しよりも借りの方が多いのは理屈ではわかっている。
でも、子供の時の貸しは大きいのだ。理不尽な分だけ、こちらも幼かった分だけ、気持ちの澱が溜まっている。
そして再会してから、忠義も同じような気持ちでいることには気づいていた。
子供の時の話をすると気まずそうな顔をして話を折るし
そのくせ私が覚えていないような些末事まで詳細に覚えている。
その申し訳なさそうな口ぶりから、私に悪い事をしたと思っていることもわかる。
それを思い出している時の罪悪感に苛まれた顔。
私はもう大人になったその顔を、姉のような気持ちで見ているのが好きだ。
***
午後になっても状況は変わらなかった。
もはや窓は雪で塞がってしまったので、外が明るいのか暗いのか、雪が降っているのかどうかも玄関を開けないとわからない。
忠義が備えてくれた暖房はあるけれど、ストーブが主力だったのは明らかで、寒さをしのぐために毛布にくるまって目を閉じていた。
よく考えずに、一人になりたい、と願っていたばちが当たった。
私は孤独にここでこのまま死ぬかもしれない。
誰にも見つけられず、たった一人で。お正月に。
でも、私はこの場所を明け渡して出て行こうとした忠義を引き留めた。
たとえ一人で死んだとしても忠義が見つけてくれるはずだから、私は目を閉じることができる。
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きりん虫(プロフ) - 茅香さん» 茅香さんはじめまして。人間味のある橙さんが私のツボです。コメントありがとうございます。 (2020年4月18日 5時) (レス) id: 04ee5be231 (このIDを非表示/違反報告)
茅香(プロフ) - はじめまして。自分は黒担なのですが、きりん虫さんが描かれる狡いオレンジさんがとても好きです。 (2020年4月18日 1時) (レス) id: 79a5f5eb6c (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん明けましておめでとうございます!どうも青さんは天からの使者になりがちですね。尊い´д` ;。今年もよろしくお願いします! (2020年1月4日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ニァさん» ニァさんはじめまして。コメントありがとうございます!自然と再生が裏テーマだったので季節描写が多かったのですが、楽しんで頂けたならよかったです。また更新中の作品に戻りますので遊びに来て下さいね!よろしくお願いします^ ^ (2020年1月4日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - 暖かい緑さんに包まれたくなります!そしてキツツキさん、彼は鳥さんになりがちですね♪幸せの青い鳥さんでしょうか(*´ω`*)ホワホワ (2020年1月4日 0時) (レス) id: 9f4337f44a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりん虫 | 作成日時:2019年12月21日 17時