冬虫夏草

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まだ閉める時間には早かったのに、お客さんがいなくなったらキミ君はお店をクローズにした。


彼は最近、私を付き合わせて季節のメニューを決めるのを日課にしている。



無言で目の前に置かれるコーヒー。


これはいつも、不器用でやさしいキミ君のサービスだ。



「もう寒いから、あったかいメニューも欲しいね」


侯「たとえば？おでんとか？」



ほんとうにこの人は、何でカフェをやろうと思ったんだろう。


おでんに罪はないけれど、カフェで出すならせめて洋風おでんとかじゃないだろうか。忠義が作るポトフみたいな。



侯「あ」


キミ君の視線を追って窓の外を見ると、児童館の小さい女の子たちがこちらに手を振っていた。


ひらひらと動くもみじみたいな小さいてのひら達に、笑顔で手を振りかえす。


一番後ろで手を振っているのは、隆平さん。




侯「もう行ってないんやろ、児童館」


「うん、もともと夏休みの間だけっていう話だったから」


侯「もうすぐ冬休みやろ。また頼まれたら行くん？」


「行かないと思う。仕事がはいってるし」


侯「そうか」



キミ君はこちらを見ないで小さい子にするみたいに私の頭をぽんぽんと撫でた。




侯「たまには外に行くか」





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