冬虫夏草

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「もらいもんの飴ちゃんしかなくてごめんやでぇ。何か思い出したら連絡ちょうだい。俺年末年始職場に缶詰やけど、買い出しくらいできる、と思うから、」


「わわ、ごめぇん、行かなあかんわ。やっぱ用事なくても連絡ちょうだい、心配やからー。ばいばい」



一方的にまくし立てた後、さくさくと雪を蹴る足音が聞こえて、それきり空気がしんとなった。


ありがとうも言えなかった。



親切な蛍光黄色のキツツキさん、誰だったんだろう。




空からふる甘露を飲むと、不老不死になるんじゃなかったかな、確か。


死にかけの私の前に現れた救世主。


さしずめキツツキさんは、神の使いか。






*****

部屋が温まってから、キツツキさんにお礼のメッセージを送った。


忙しそうな神の使者の邪魔にならないように、返信不要です、と添えて。




しばらくして、日付が変わるころに鳴いた電話。


“あしたのあさ げんかんのそとみて しょうた”


返ってきた返事は、なぜか全文ひらがなのそれで。しょうた、というのがキツツキさんの名前らしい。


しょうた。


学生の時の知り合いではない、多分。


今から職場に缶詰になる、年末年始も働く、社会人。


甘露を降らせた、ピンチにやってきた、神様の使者。




キツツキさんは一体何者なのか。


気になって眠れないでいるうちに、いつの間にか夜が明けていた。




翌朝は晴れていて、明るくなってから玄関を開けたら、封筒がドアのそばに落ちていた。


防水加工の空色の封筒は、多分神様からのお手紙だ。




”あけましておめでとう しょうた“



ノーヒント。


メッセージで言えばいいのに。



結局あなたは誰なんですか。



そして、逆さにした封筒から、転がり落ちたかんろあめは、また2粒。


私はかんろ2粒分は、長生きするのかもしれない。


今年初めての贈り物は、神様からの年始のあいさつ。




いい年になりそうだ。






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