破れた傘にくちづけ １

4 ページ27

.




イライラしながら見とったら、カウンターにグラスをさげに行ったエースがニヤニヤしながらAに何か耳打ちして、Aが訝し気に回りを見渡す。


俺と目が合って赤くなったのはかわいかったけど。


エースに手を取られてスツールを降りて、そのまま手を繋いで『staff only』の扉の向こうに消えたので、場はちょっとざわざわした。



隅の不埒な男2人はもちろん、エース目当てで店に通ってる人間たちは騒然となったし

俺は頭に血が昇った。
血は通ってないんやけど。






ジョ「マックは仕事してや」


ジョニーが笑いをこらえながら酒を差し出してきたので、仕方なく受け取る。


マ「なんでや」

ジョ「マックが今にも能力暴発させそうな顔で見てるからやんか。俺らの当番の時間にルール違反せんでよ。ジャッキーに怒られるの嫌や」


店の仕事中は能力は使わない。狩りもなし。


それはなるべく店を人間の生活に溶け込ませるために決めた俺達のルールで、守らんかったらジャッキーに鬼ほど怒られる。


ジョ「マックがスマートに連れて行かんからやろ」

マ「俺のやのに」

ジョ「今だけエースに譲ったり」


どういう意味やねん。

とはいえ店内はそこそこ混んでいて、店を抜けて追いかけられるような状況じゃない。



ナンパされるよりは、ましやけど。


まあ、エースやし、ええか。





.

5→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す