チョコレートと厄介者 (パワー) ページ3
「あ、Aくん。かわいいお客さんが来てるよ」
巡回から帰ってきた俺を、先輩が意地の悪い笑みを浮かべて出迎えてくれた。
嫌な予感がして、「『あいつ』ですか」と聞くと、先輩は楽しげに頷いて、応接室を指さした。
室内からは、同僚の稲田さんと『あいつ』の騒がしい声が聞こえてくる。
「はやくAを出さんか、この卑怯者がァ!!
お前が隠してるんじゃろ!?Aを解放せんかァ!!!」
「きゃああ!!髪を掴まないでください!
なんなのこの人!?Aさん!Aさん!!早く来てくださーい!!」
正直、無視して昼食でも食いに行きたいが、絡まれている稲田さんのことを考えるとそういうわけにもいかず、俺はしぶしぶ応接室に足を踏み入れた。
「ああ、よかった、Aさん!!酷いんですよ、この人!
ほんとに野蛮!!こんなのを処分しない四課の気が知れないわ!」
「野蛮なのはどっちじゃ!!A、騙されるな!
この女はウヌを爆殺する気じゃぞ!!!!」
女のキーキーした声で一気に詰め寄られ、一気に脱力感に襲われる。
舌打ちしたくなるような苛立ちをなんとか抑えて、パワーに向き直る。
「……パワー、お前とりあえず稲田さんに謝れ。
髪掴んだりしたんだろ。聞こえてたぞ」
「は?してないが?」
「はぁあ!?Aさん、なんなんですかこの人!」
「聞こえてたっつってんだろ、いいから謝れ!」
暴れるパワーの頭を掴んで、無理やり下げさせる。
無論、俺も一緒になって頭を深深と下げた。
「稲田さん、本当にすみません。よく言って聞かせておくんで」
「…もうっ!Aさん!この人、もう三課の施設に入れさせないでくださいね」
捨て台詞を吐いた稲田さんを見送ったあとで、俺はパワーの頭にゲンコツを落とした。
「イテ!!!」
「何してんだバカ女。もう会いに来んなって言ったはずだぞ」
「は?聞いてないが!!命令するな!!」
べっ、と舌を出したパワーの顔が無性に腹立たしくて、もう一度ゲンコツを喰らわせた。
……助けるんじゃなかった、こんな女。
以前、仕事で一緒になった時、攻撃を受けて苦しんでいるところを治療してやったらこのザマだ。
あれからなぜかいたく気に入られてしまい、仕事中も押しかけてくるようになってしまった。
薄情な考えかもしれないが、あのときこいつを放っておくべきだった。
こんな面倒事に毎日巻き込まれることになるのなら。
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ちえ - アキくんの夢もまだ少ないのでこれから楽しみに待ってます (2022年10月15日 23時) (レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - チェンソの夢はまだまだ少ないので嬉しいです!とても面白かったです!キャラクターの思考や話し方なんかがとても自然で楽しく違和感無く読めました。次回を楽しみにしています。差し支えなければ、マキマの夢が読みたいです。女夢主であればどんな話でも嬉しいです。 (2021年7月8日 0時) (レス) id: 979541037a (このIDを非表示/違反報告)
肩サラダ(プロフ) - チェンソーマン大好きなのでこういう短編集がすごく嬉しいです、、!最高です!!リクエストをお願いしたいのですが、ビームくんで女主のお話を書いて欲しいです!お時間ある時で構いませんのでよろしくお願いします! (2021年2月11日 20時) (レス) id: dfa81ef2dc (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - ドコサヘキサエン酸さん» コメントありがとうございます!もっと良いものが書けるように頑張りたいです;;本当そう思います!アニメ化がきっかけになって、もっと増えたらいいな…… (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - あるみくさん» コメントありがとうございます!嬉しいです…!更新頑張ります! (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:切れ端 | 作成日時:2020年4月20日 11時