お弁当の話(コベニ) ページ11
午前の業務がひと段落した頃。
時計の針は昼過ぎを指していた。
デスクに腰掛ける小さな背中に、暴力の魔人は明るく声をかけた。
｢コベニちゃん、お昼食べに行かない？｣
｢あっ、暴力さん……｣
振り向いたコベニの表情が、どこか曇っているように見えた。
普段なら昼食の誘いにはとびきりの笑顔で応えてくれるのだが、今日はなんだか様子がおかしい。
なにかを気にしているように、そわそわしている。
｢どうしたの？もしかして財布忘れたとか？｣
もしそうなら、自分が払うから問題ない。
家に給料の大半を入れているせいで、コベニがあまり自分にお金を使えないのは知っている。
今までに何度も奢ったことがあるし、今回もそうすればいい。
しかし、コベニは暴力の問いかけをぶんぶんと首を横に振って否定した。
｢あ……ち、ちがくて、その、これが、あるので｣
コベニがおずおずと取り出したのは、かわいらしい弁当包みだった。
包みはかわいらしいが、中の弁当は、随分と大きく見える。
｢へえ、お弁当かあ！コベニちゃんが作ったの？｣
コベニがふいに表情を緩めて、柔らかく微笑む。
｢Aさんが作ってくれたんです｣
｢ふうん、Aちゃんが｣
AAは、コベニと同期のデビルハンターだ。
有能な上に、目鼻立ちが整っていて、おまけに愛嬌もたっぷりの人気者。
暴力も何度か彼女に会ったことがあり、
人あたりの良い笑顔に好感を持ったことをよく覚えている。
しかし、誰とでも仲の良いイメージのあるAだが、コベニと話している姿はほとんど見たことがない。
弁当を作って渡すほど、2人は仲が良かっただろうか。
｢コベニちゃんとAちゃんって、そんなに仲良かったっけ？｣
｢あ、いえ、そういうわけじゃないですけど…、
最近、Aさん、お弁当を作るようになったらしくて。
『分量を間違えておかずをついたくさん作っちゃうから、よかったらお裾分けさせて』って言ってくれたんです｣
いそいそと包みを開け始めたコベニは、とても嬉しそうな顔をしていた。
比較的質素な暮らしをしているコベニにとって、他者に昼食を用意してもらうことはありがたいことなのだろう。
それにしてもAちゃん、流石だな。
目を瞑り、うんうんと頷きながら感心する。
彼女のことだ。きっとコベニの家庭事情に気を遣って、コベニに弁当を持ってきたのだろう。
｢わ、わぁ……｣
コベニの声に、ふと目を開けると、机の上には大きな重箱が乗っていた。
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ちえ - アキくんの夢もまだ少ないのでこれから楽しみに待ってます (2022年10月15日 23時) (
レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - チェンソの夢はまだまだ少ないので嬉しいです！とても面白かったです！キャラクターの思考や話し方なんかがとても自然で楽しく違和感無く読めました。次回を楽しみにしています。差し支えなければ、マキマの夢が読みたいです。女夢主であればどんな話でも嬉しいです。 (2021年7月8日 0時) (レス) id: 979541037a (このIDを非表示/違反報告)
肩サラダ(プロフ) - チェンソーマン大好きなのでこういう短編集がすごく嬉しいです、、！最高です！！リクエストをお願いしたいのですが、ビームくんで女主のお話を書いて欲しいです！お時間ある時で構いませんのでよろしくお願いします！ (2021年2月11日 20時) (レス) id: dfa81ef2dc (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - ドコサヘキサエン酸さん» コメントありがとうございます！もっと良いものが書けるように頑張りたいです；；本当そう思います！アニメ化がきっかけになって、もっと増えたらいいな…… (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - あるみくさん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！更新頑張ります！ (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：切れ端 | 作成日時：2020年4月20日 11時
