１２話 ページ25
恵くんを見送った後、ご飯を食べる気にも慣れず適当にお風呂に入ってベッドにダイブした
ぼやっと天井を見つめていたが、ふっと今日の事を思い出し、頬に手を当てた
ピリッとした痛みに確認すれば、手首は赤くなったままで数分前のことをも思い出してしまった
「あーーーー！どうしよっ明日も会うじゃん
どんな顔して会えば？！」
徐々に顔に熱が集まり、きっと自分の顔が真っ赤なのだろう
ゴロゴロとベッドの上をのたうち回っても熱が引くわけもないし、力強く握られた手首が痛む
「全部棘先輩と恵くんのせいだ」
小さく悪態をつき、眠くもないのに瞼を閉じた
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
ちいさな蝶が舞って、手入れのされた綺麗な日本庭園
夢を見てるのだろうか
見たことがないはずなのになぜかとても既視感を感じてしまう場所に首を傾げる
「ここに来たことがある？」
庭園の縁側には、着物を綺麗に着こなした男の子が行儀よく座り、こちらに気がつくと、目をぱちくりさせ、にこりと微笑み手招きをしていた
すると「行っておいで」と懐かしい声と共に小さな女の子が私の横を通りすぎ、男の子の元に近寄っていった
桜が描かれている藍色の着物の袖が揺れ、余程会いたかったのが伝わってくる
「久しぶり！」
嬉しそうに声を掛けている女の子は小さい時の私だ
「見てー」と男の子の目の前でくるくる回って見せると「ツナマヨ」と聞き覚えのある単語が聞こえてきた
小さな頃の私には意味が分かったのか照れながら「ありがとう」とはにかんでお礼を言っていた
もっと近くで見たいと思い、足を踏み入れると大きな穴に落ちるような浮遊感に襲われ、「待って！」と手を伸ばせば何もない天井が目に入った
「リアルな夢……」
伸ばしていた手を見つめるも、ただ虚無感だけが残っていた
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作者名：ゆきはな | 作成日時：2021年4月27日 22時
