【HQ】天才になりたい少女の話。

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コンコン、と部屋のドアが叩かれる。
おばあちゃんかな。適当に返事をすると、意外な声に名前を呼ばれてすぐ振り返った。


「…お母さん、ビックリした。おかえり」

「ただいま。久しぶりね」

「うん…」


黒い髪に黒いスーツ。地味な格好をしているのに、圧倒的顔面の良さで華しかない。それが私のお母さんだ。

デザイン会社の社長で、仕事にしか興味がないビジネスウーマン。

会うのなんか数ヶ月ぶりだ。入学式も来なかったし。
だからといって嫌いなわけじゃないけど、少し気まずい。


「あんた、お盆休みどうする? あっち帰るの?」

「…別にいいや。面倒だし、部活あるからそんなに休み長くないと思う」

「そう…おばあちゃん寂しそうにしてたから電話くらいしてあげなさい」

「分かった」

「そういえば部活は何やってるの?」

「男子バレー部のマネージャー」


それを聞くなり、お母さんは目を丸くして笑った。


「もうバレーはやらないんじゃなかったの」

「…誘われたから」

「誰に」

「隣の子」

「へえ…まあいいけど。頑張りなさい」


( 言われなくても、もう頑張ってるよ )

お母さんは知らないと思うけどね。

バレーだって頑張ってたけど…お母さんがろくに観に来てくれないまま終わっちゃったし。
本当に私に興味ないんだな。


バタン、とドアが閉まって ぼうっとケータイをいじる。


《A〜〜会いたい〜》
《今年は帰ってこないんか?》


……



「やっぱり帰るって言えばよかったかな…」





《帰れない。私も会い》






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《帰れない》






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