はじまりはじまり 和華 ページ13
こんこん、と、咲夜は扉を二回ノックした。周囲一帯にぴりりと張り詰めた空気が漂う。
「ファラーシャ様、お話があるというお客様が来ております」
一方下がり、咲夜は少し会釈した。部屋の中から、憂いを帯びた声が飛んでくる。
「ごめんなさい、今は少し時間が……」
「ファラーシャさん、私達はサーシャドールさんと貴方の事情を知っています。隠す必要なんて無いんじゃないですか」
和華が切り札の一言を出した。カノンや志貴、咲夜、桐真の表情が張り詰める。ファラーシャもまた、それだけで動揺したのが感じて取れた。
「―――そう、わかったわ。和華さんと言ったかしら?あなた達にも協力して貰います。入っていいわよ」
きい、と戸の開く音がした。ふわり、と蝶々の鱗粉が舞う。鮮やかな紫色の髪は下に行くにしたがってクリーム色になっている。ファラーシャ・スカーレットは憂いを帯びた、そしてそれでも余裕のある表情を浮かべながら、和華達一行を迎え入れた。
「もう一人お客さんがいるの。仲良くしてね」
ファラーシャの部屋は隅に暖炉があり、冷え込んだ外に反して非常に暖かかった。実家にあった和華の部屋(六畳間)の数倍はあるかと言う広い空間である。そこにある物はすべて調度品で取り揃えられ、暖炉に焼べられている炭すら何十万としそうだ。
中央に据えられたアンティーク調のテーブルの近くには二つの椅子があり、少女が一人座っている。学ランの亜種を着たその少女は、肩までかかった茶髪の触覚の部分だけが長く伸びていて、特徴的なのは青い瞳である。それは天の川が閉じ込められたようにきらきらと、グレート・バリア・リーフに映ったプレアデス星団のように、鮮やかな青の中に輝いていた。首を少しだけ傾け、和華達の方を見ている。
「あ、美優じゃん」
志貴が言った。美優と言われた少女は星空を思わせる瞳を一層輝かせ、ただでさえ大きな目を大きく見開く。
「志貴!それに……ええと……」
「京森カノンです……」
「呉月和華です、覚えないでください」
「あ、僕は月輪桐真です。こんばんは」
「あ、はい。私は刻宮美優です!よろしくお願いします」
美優は困惑しながらもにこっと笑った。ファラーシャと咲夜は微笑ましげにそこを眺めていたが、ファラーシャは突然深刻な顔になり、「ちょっといいかしら」と言った。
「ごめんなさい、少し聞いてね。私は今、妹のサーシャに乗っ取られそうになっているの。……いいえ、実はもう乗っ取られていて、私の意識は一時間と保たないわ。だからあなた達に―――サーシャを倒してほしい」
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フウ(プロフ) - 更新しました (2022年8月2日 9時) (レス) id: b910a0dd1c (このIDを非表示/違反報告)
フウ(プロフ) - 一次的にアクセスできませんって出ました・・・ (2022年8月2日 8時) (レス) id: b910a0dd1c (このIDを非表示/違反報告)
フウ(プロフ) - 更新します。少し設定変えます。 (2022年8月2日 8時) (レス) id: b910a0dd1c (このIDを非表示/違反報告)
うp主こと東方好き死神まお(プロフ) - 記念すべき10巻目!作っておきます! (2022年7月10日 17時) (レス) @page50 id: f03e2072c0 (このIDを非表示/違反報告)
フウ(プロフ) - 更新しました。 (2022年7月10日 2時) (レス) id: b910a0dd1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サナティ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2022年4月20日 17時