【募集企画】東方幻想記録物語8巻 (ページ46)

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不吉なコト　志貴ページ46

「でも本当にお話を聞くだけでいいんですか？裏がありそうで怖いんですけど……」

「もう、心配しなくても取って食ったりしないわ。でもあなた、とても美味しそうね。……そんなに怯えないで頂戴。ただの冗談よ」

前からそんな会話が聞こえた。ファラーシャとかいう、レミリアの妹を連れ戻しに紅魔館を出ようとした時の事だ。そこにいたのは噂をすればファラーシャとそのメイド、変わり種の学ランみたいな格好をした女子がいる。多分カノンや咲夜も同時に見つけたんだろうな。咲夜は急に声を上げた。

「美夜に……ファラーシャ様！ご無事でなによりです、お嬢様がとても心配なさっていて……。美夜もそうだわ！私がどれだけ心配したか！……そしてあなたは誰ですか？ファラーシャ様のご客人のようですが」

ファラーシャは困ったように微笑んで、「ごめんなさい」と言った。恐らく美夜って名前のメイドも、ポーカーフェイスのまま気持ち深めの礼をする。そして誰かと質問された女子は、修学旅行の写真みたいな最上級の笑顔を浮かべて、言った。

「私は刻宮美優と言います！色々あってここに来たんですが、泊まるあてがないので、一晩だけでも泊めてもらえないかと思いまして！」

「それで、泊める代わりに私の話を聞いてもらおうかと思ったの。ねえ、良いでしょう？……あら？見慣れない子が居るわね」

ちらっとファラーシャが見たのは、多分、俺だと思う。

「俺は神凪志貴だ。俺もここには厄介になると思うからよろしくな、ファラーシャ、美夜、美優」

「初対面で下の名前呼び捨てってどんな狼藉だッ」

さっき咲夜やカノンから聞いた話―――外来人やら何やらの事をざっくりと反芻しながら俺が言うと、カノンが横から強めに小突いた。文句を言いかけたが、ほかの奴が居る手前やめておく。中学の頃、夫婦だなんだと冷やかされた嫌な思い出が頭をかすめたからだ。

「じゃあ行きましょうか、美優さん。ほらこっちよ」

ファラーシャ、美夜、美優の三人は紅魔館の奥へと入っていった。そして俺は、その様子をやけにじっと見ているカノンの様子に気づいた。それが気になった俺はカノンの肩に手を置いて、どうしたんだと聞く。

「どうしたって、明らかにおかしいじゃん。だってさっきまで咲夜様の妹と組んで何か考えてたのに、急に帰ってきて外来人をもてなすなんてまるで別人。……いや、もしかして本当に全く違う人とか？例えば、そう。―――ファラーシャさんが、誰かに操られてたとか」

カノンはひどく不吉なコトを言い、神妙な顔をした。