【募集企画】東方幻想記録物語8巻 (ページ25)

今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:4,062 hit

知らないけど　暗覚記ページ25

突如、真っ黒い不気味な隙間の切り口が現れたかと思えば、そこから紫が顔を覗かせた。
紫は手をヒラヒラと振っている。

「なんの用？」

「実は、貴方に確かめておきたいことがあって」

「…確かめておきたいこと？何よそれ」

先程までヘラヘラ笑っていたのに、急に別人のように紫は表情を変えた。まるでなにか思い詰めているような、私に対して不吉な物を感じ取るように。

「霧雨魔理沙。貴方も知っているでしょう？」

私の記憶が正しければ…いや、私の記憶に間違いなどないのだが、霧雨魔理沙というのは博麗霊夢と共に異変解決をこなすことが多かった、あの魔法使いのことだ。名前しか聞いたことはないが、確か弟がいるのだとか。

「知ってる。その霧雨魔理沙がどうしたわけ」

「スキマを介して聞き耳を立てた程度なのだけど、魔理沙の霊夢に対する記憶が無くなったみたいで」

「へぇ…」

多分、紫は霧雨魔理沙の記憶に私が関与したのだと思っているのだろう。
いくら私のような薄情者だとしても、話したこともない人間の記憶に手を加えるなんてありえない。正直言ってバカバカしい。そもそも、私が霧雨魔理沙の博麗霊夢に関する記憶を全て無くしたとしても何になる。

「ありえないとは思うのだけど…記、貴方が何かしたわけじゃないでしょうね？」

「なわけないでしょ、霧雨魔理沙の名前しか知らないし」

まぁそうよねぇ、と言いながら、部屋一面を見渡して物色する紫。それを横目に、そろそろ減ってきたお茶を飲んだ。苦味が喉に浸透する。

「…思ったんだけど、もしかしたら他の人の記憶からも、博麗霊夢の存在が消え去ってる可能性は？」

「ありえなくは…ないわね。今度、改めて魔理沙にでも聞いてみようかしらね」

それだけ言い残すと、紫はスキマに顔をしまい、その後跡形もなくスキマは消え去った。紫がいなくなり、またこの部屋には私がお茶を飲む音しか聞こえなくなる。
…そういえば、紫がいつの日かチラッと言っていた。「外来人が霧雨魔理沙と共に行動をしている」と。私が思っていたよりも外来人は多く、外来人全員が霧雨魔理沙と関係を持っているとは考えにくい。
しかし私が思うに、霧雨魔理沙の博麗霊夢に関する記憶が無くなったのは、もしかすると外来人が何か影響をもたらしたのでは？

「…確かめるか」

外来人と顔を合わせるなんて死んでもお断りだが、今回は幻想郷の平和を守るため。私は立ち上がり、外来人の元へと向かった。
なぜその記憶は、消え去ったのか。