柱の少女の物語３〈鬼滅の刃〉

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数秒間の沈黙。
時間が惜しい。もう待てない。

私は最終手段として日輪刀を黒死牟さんに預ける動作をする。

「どういう、、意図だ、？」

「剣士が自分の刀を鬼の貴方に預けるって言ってるの。意味、わかるでしょ？
私はあなたに抵抗の意思を一切持たない。」


そう伝えてすぐに、2人の治癒に入る。

失った部分の再生。
これは精気が必要だ。2人に精気わけるなんて初めてだな。

でも、ここばかりはできるできないじゃない。やるんだ。


まずは無一郎から。
こーれはやばい、脈が弱い。時間がない。

抱き上げると、ぐったりした身体。既に意識がない。
ごめんね。痛かったよね。苦しかったよね。私なんかのために、ごめんね。

深く息を吐き、大きく吸う。
口を少し開けさせ、そこへ力を込めた精気をゆっくりと送る。


2人は深い月色に包まれる。

見る見るうちに彼の斬り落とされた右腕が、骨から、筋繊維から出来上がっていく。





それを実際に初めて見た黒死牟は驚きを隠せなかった。

月も隠れた闇夜の草原では、彼女の発する光が月であった。

地上に降り立った、月の神。

まさに彼女が、月の女神なのだろう。
そう直感が告げていた。


彼女の横顔は慈愛に溢れ、異国の聖母とは彼女のような人間を指すのだろうと思った。

他者を活かすために自身の損を厭わない。
自己犠牲の手本のようなもの。



2人目には女の治癒。

彼女にも同様に口吸いを通して治癒していく。
時折、謝罪の言葉を発していた。

優しく抱き上げ、月色の光を相手に灯すその姿。

一貫して見受けられる生に執着しない姿勢。

自分とは、かけ離れている。
遥か昔感じた劣等感を思い出した。




全ての治癒が終わったと思われる時、
彼女はその端整な横顔から一筋の涙を流した。

暫く目が離せないような、形容し難い美しさが、
そこにはあった。






思いのほかしんどくは無かった。
意識飛ぶかと思ったけど、吐血と頭痛で済んでいる。意識はある。かろうじてだが。




「ありがとう。刀折らないでいてくれたんだね」

てっきり折られてるかと思った。
そちらからしたら日輪刀なんてぶっ壊しておきたいだろうと思ってたから。

「、、、、、」

「え、なに」

なんだよお前さては冨岡義勇パターンか？
心の中でよぉく喋って表で喋んないタイプか？
そんなに至近でじっと見つめられても困るんだけど。


すると、いきなり彼の腕が顔に伸びてきて私の頰に触れ、その親指で口元を拭われた。

冷たくて、ゴツゴツとした手のひらだった。

親指には先程拭いそびれたわたしの血が付いている。


え、待ってよ嘘でしょ。

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