柱の少女の物語３〈鬼滅の刃〉

１０３ ページ11

「そしてお前がきらりにそうあるように望んでいる。強くて優しくて、仕事ができて、治癒まで。お前らが彼女の呪いを重くするんや」

そうあれと、そうあって欲しいという他人からの思いは時に足枷となる。
俺だってそうなんだから。

「俺のせいだというのか？俺たちの？」

「そうや」

「甚だしい。責任転嫁も程々にしろ」

頬を殴られる。割とマジで殴りよった。
唇が切れた。鼻血も出てんな。
血の味がする。

「伊黒さん！流石にやりすぎです！多組織の、いわば民間人相手ですよ！」

そうやで。お前の仲間は中々の不満のぶつけ方をしとる。


あーあ。

その状況を見られてるなんて可哀想やな。


「、それで気が済んだ？」

「ッッッ！！」

ほら焦ってる。
意中のきらりが背後からお出ましやで。

動揺している蛇男にきらりは優しく諭すように語る。
口調は優しいが、言葉には熱がある。





「ごめん小芭内。
一個人のものさしで判断して、悪人だからって理由だけで他人を殴る人間はね、
悪人よりも世界を悪くするんだよ。
ごめんね。今日だけは許して？明日からは、夜からはちゃんとするから」


やめろ。やめてくれ。
俺は月にそんな顔をさせる為に後をつけて来たんじゃない。
これじゃあまるで、俺が、


「ごめんしのぶ。帰ったら相手するから2人のこと頼んだわ」

「、はい。りょーかいです」

「ほら伊織も。いつまで掴まれてるわけ？行くよ」

得意げな表情しやがって。

甘味処に戻っていく。あいつと。
離れていく。俺から。




「偉いじゃん。殴り返さなかったんだね」

「俺はそんな軽い挑発にはのらんからなあ」

「はーいはい、じゃあそんな偉い伊織さんのことをきらりちゃんが治してあげましょう」

「わーうれしい」

「もっと嬉しそうにして！ありがたみ感じて！！」


邪魔者。余計なことをする奴。厄介者。
月の幸せを、笑顔を壊す。

ああ。







「さあ。帰りましょう伊黒さん。冨岡さん。仕事サボってまで来ちゃったんですから」

「、ああ」

「伊黒、お前の気持ちはわかる。さぞ悔しいのだろう」

ああ本当に冨岡さんて馬鹿なのかな。

「余計なこと言わないでくれますか冨岡さん。
そんなんだからみんなから嫌われるんですよ」

「きらりは俺のことが嫌いではないと言っていた」

「あ〜あ〜〜はいはい！本当に手がかかる！
きらりちゃんの苦労も知れるわ」







みんな、こうやってきらりちゃんと少しずつすれ違いを起こしたことを、そのままにしてしまったことを、酷く後悔することになるなんてまだ知らなかった。知る由もなかった。

１０４→←１０２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す