泣いていた。 ページ2
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傑が泣いていた。
私の目の前で、口をきゅっと固く結んで。
私は口をあんぐりと開けて目を見開いていた。いや？え？傑？泣いてる？なんで？え？泣く？泣くの？と。頭の中は傑の泣き顔でいっぱいになっていた。軽くパニックに陥っていた。
なんせ、傑が泣くところなんて初めて見たのだ。傑はいつも、何処か胡散臭い笑みを貼り付けていて、でも悟だとか硝子だとか私だとかには親しげに笑って見せたり、たまに怒ったり不機嫌になったり。色んな顔を同級生としても恋人としても見てきたつもりだった。けれど、泣いているところは、そういえば見たことがなかった。
傑はいつも気丈で、感情のコントロールがしっかりと出来ていて、取り乱すだとか、そういったところもなかったはずだ。たまに悟と喧嘩になることがあっても軽く言い合いをしてすぐに仲直りしていたし、暴れて八つ当たりして暴言を吐くようなこともない。
そんな傑が。感情の起伏が普通よりも少ないと思っていた傑が、泣いている。
あまりの衝撃に、私は瞬きすら忘れてしまっていた。
「……す、傑……？」
「……ッあ、いや」
これは、と。傑はその瞬間に自分の異変に気が付いたかのように自身の顔を手で隠した。涙を慌てて拭って、ずびっと鼻をすすっている。
「なんでもないんだ、ごめん」
「すぐる、わたし……」
「ごめん、今日はちょっと体調が良くないみたいだ、帰るね」
と。そう言って立ち上がると、傑は私の部屋から去っていってしまった。パタン、と扉が閉まるのを黙って見届けて、私は呆然と音を立てなくなった扉を見つめていた。
そして、一言。
「……やってしまっ、た？」
やってしまった。これは、やってしまったのではないか。私。
傑が泣いた。あの傑がだ。冷静沈着才色兼備そんな傑を泣かせてしまった。私が。きっと「嫌い」と言ってしまったことで。
どうしよう。どうしよう。取り返しのつかないことをしてしまったのではないか。
私は座っていたところを立ち上がり部屋を右往左往する。いや、信じられない。本当に信じられない。あの傑が泣くなんて。
けれど、泣かせたのだ。他の何者でもない、私が。
大好きな大好きな、傑を。
「ほ、本当にどうしよう……」
私まで泣き出したくなってきてしまった。
どうしよう、どうしよう。
私は傑が先程まで腰掛けていた座椅子に視線をやり、不安と焦燥でいっぱいいっぱいになってしまって、ひとつ涙を溢した。
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翠(プロフ) - はああああほんっっっとに…癒されました……ありがとうございます……… (2023年1月7日 23時) (
レス) @page9 id: 375689edf5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 夜顔さん！コメントありがとうございます！夏油さん泣いちゃったら可愛いなぁというだけで書いてしまったのでどうなることやらでしたがなんとか完結出来て良かったです！(笑)こちらこそそんな風に言って頂けて嬉しいです！読んでくださりありがとうございました！！ (2022年1月23日 11時) (レス) id: 4cbec933ab (このIDを非表示/違反報告)
夜顔(プロフ) - 夏油様が可愛くて格好良くて萌え死にそうでした😆こんな良い作品をありがとうございますっ！ (2022年1月23日 4時) (レス) @page9 id: a5b9bd8745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2022年1月21日 13時
