ヴァンパリズム ／ sha ページ20
ぷつり、皮膚の裂ける音がした。直後、口内に広がる鉄の味。その中に含まれる甘味、苦味。今まで味わってきたどの血液よりこの血液は美味しく、俺を昂らせる。
｢ん……、は、やっぱ御前のが一番美味い。｣
彼女の首筋に突き立てていた歯をゆっくりと離し、自身の犬歯によってあけられた小さな穴を静かに見つめる。その周辺には深い歯型が痛々しく残っている。当たり前だ、俺は吸血鬼みたく牙がある訳では無い。｢ごめんな。｣と小さく呟くと共にAの頭を撫でてやると、彼女は嬉しげに微笑む。
｢ううん、シャオロンの役に立ててるのなら、いいの。好きなだけ吸って、飲んでいいんだよ。｣
彼女の言葉に、俺は再び彼女の首筋へと顔を近付ける。俺を誘惑する甘美な香り。欲望に従い、俺は再び首筋へと噛み付く。彼女が痛みに耐えるように小さく呻く。嗚呼、止めなければ。そう思っても体は止まることなく、無我夢中で彼女の血液を取り込み続ける。
そして俺は、とうとう我慢の限界に達する。血で染る自身の唇を彼女の唇と重ねる。ゆっくりと顔を離すと紅を塗ったかのように赤く彩られる彼女の唇。そっと親指の腹でなぞっては小さく問い掛ける。
｢俺に、命捧げてくれるか？A。｣
声は震えていたと思う。彼女と生きたい。彼女を幸せにしたい。しかし、それを上回る喉の乾き。飢え。今、この時の。自分の欲の事しか考えられていない問い掛け。断られる気で放った問いに、彼女はくすりと微笑んだ。
｢シャオロンに殺されるなら本望だよ。｣
彼女は、まるで女神のような優しい笑みを向け、優しく俺を抱きしめた。最後に彼女の温もりを堪能しておこう、と強くAを抱き返す。彼女は最後まで、俺の為に生きる優しい女だった。
｢ずーっと、愛してるよ。｣
俺が、本物の吸血鬼だったなら。御前も吸血鬼にして、一緒に一生生きてくのに。頬を伝う涙に気付かぬ振りをして、俺は彼女の喉元に噛み付いた。
俺も、ずっと愛してんで。
─
ヴァンパリズム：吸血愛。他人の血を吸うこと、吸血で性的興奮を得る性的倒錯。
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平凡な人(プロフ) - うん。凄い。性癖にドストライクで刺さりました!更新楽しみにしています！ (2022年2月3日 20時) (
レス) @page9 id: 244f5e227a (このIDを非表示/違反報告)
空白(プロフ) - めちゃくちゃ好みです！！毎回更新楽しみにしてます♡ (2022年1月26日 10時) (レス) @page22 id: 765b91b6bf (このIDを非表示/違反報告)
りんごうまい - ところどころ性癖に刺さった (2021年10月21日 23時) (レス) @page20 id: ef60100ca2 (このIDを非表示/違反報告)
たらい(プロフ) - ど趣味でえぐいっすふファンになりやした (2021年8月1日 0時) (レス) id: 0b993ff198 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - 好きです!! (2021年6月13日 14時) (レス) id: f606088b79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：悲哀 | 作成日時：2021年5月28日 19時
