検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:99,752 hit

83.約束の ページ34

「無一郎くん、どうぞ」

夕食を机に並べていた私は最後に用意したお皿を彼の前に置いた。

「これ…」
「約束のふろふき大根。作ったの」

言えば彼がお箸でほぐした大根を一つつまんで口に運んだ。

「どうかな?」

どきどきしながら聞くと、予想外の答えが返ってくる。

「懐かしい味がする」

「えっと…それは美味しいってことでいいの?」

こくっと頷いた彼がまた一口食べる。

「よ、良かったぁ」

ほっと一息付いて、へなへなと座り込む。
この日のために特別訓練の合間に蝶屋敷で練習した甲斐がある。

もぐもぐ食べ進める彼の横顔を眺めていると、ふと思い出す。

「ねぇ、聞いてもいい?」
「うん?」
「なんで私に会う資格がないって思ったの?」


ずっと気になっていた。

私の様子を見に来てくれた彼が言っていたこの言葉。
勇気を出して言えば、彼が思い出したように話し出す。


「隣町で鬼に襲われた時のこと覚えてる?」

「進くんの手を取って走って逃げようとしたところまでなら…」

「あの後、Aは鬼に血鬼術かけられて、人質として盾にされたんだよ。その時、僕は一か八か鬼に刀を振るおうとしたんだ。ここで逃がしたらまた被害者が出るからって。もしかしたら君を巻き込むかもしれないのに」

黙って聞いていたら、私の顔を彼が少し不安げに覗き込む。

「怒らないの?」

彼の言う通り、ここは私が怒るところなんだと思う。

でも、私にも落ち度があった自覚がある。

「あの日、私は無一郎くんの言うこと聞かなかったから。『帰れ』って言ってくれてたのに」

「でも僕はそこまで計算に入れるべきだったと思ってるよ。君が言うこと聞いてくれないのは今に始まったことじゃないし」

「う…」

何だか失礼な事を言われた気もするけれど、それはとりあえず置いておく。

初めて会った時からの事を考えると、彼が私のことで悩んでくれていたことが少し嬉しかった。

「でも、無一郎くんは私の安全も選んでくれたんでしょ?それなら十分だよ。元々無一郎くんが助けてくれなかったら私は無一郎くんや蝶屋敷のみんなと会うことも無かったんだから」

「そう」

「私のこと助けてくれてありがとう」

にっこり笑いかける。

「私が動けなくなったのを運んでくれたのも、時間を見つけてお見舞いに来てくれていたことも本当に嬉しかった。何度も来てくれてたんでしょ?」

「それ、胡蝶さんから聞いたの?」

「そうだよ」と言えば照れたのか彼の頬が赤くなった気がした。

84.焼きもち→←82.再会



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
118人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。