70.時間 ページ21
「Aさん、もしもーし、おや?今日は起きてますね」
翌日、しのぶさんのそんな声で目が覚めた。
眠っている間、また夢を見ていた。
昨日、カナヲが言っていた炭治郎くんたちの夢だった。
その夢にはカナヲも出てきた。
私は夢の中で彼女のことを「カナヲちゃん」と呼んでいた。
夢で見たことは私が忘れてしまった記憶みたいなので、だから昨日恥ずかしそうにしてたのか…とそこで初めて納得した。
「しのぶさん…」
にっこり微笑んで「調子はいかがですか?」なんて聞いてくる彼女。
けれど、直ぐに何かを察してくれる。
「元気ないですね、どうされました?」
昨日、無一郎くんと交わした会話を話す。
「ご自分を責めてらっしゃるんだと思います。隣町に行かなければ、Aさんの体が動かなくなることも記憶を失くすこともなかったでしょうから」
「私、その辺りのことは覚えてなくて………」
私を見捨てようとしたと彼は言っていた。
でもふろふき大根を作る約束をした。
会う資格なんて無いとも言われた。
『わがままだから』と彼は言っていた。
「無一郎くんがどうしてあんなこと言ったのか、知りたいです」
彼のこと、もっと知りたい。
「とにかく今のAさんには時間が必要ですね」
どこか遠くを見るような目で、しのぶさんが私を見た。
「時間…ですか」
「まずは日光を浴びて体が動くように戻しましょう。そして、記憶も取り戻しましょう。そうしたら、きっと見えてくるものがありますよ」
「……はい」
「ほら、今日も良い天気みたいですから」
そういったしのぶさんは朝日が差し込む縁側を眺めた。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時