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69.約束と資格 ページ20

私の名前を呼ぶ声がして目を開いた。

「なんで泣いてるの?」

私の顔を覗き込む無一郎くんの姿が目に入る。

つーっと私の目から流れ落ちる涙を彼の暖かい手が伸びてきて親指で拭う。


「夢を…見てました」

「そう」

「沢山見たんですけど、どれも無一郎くんが出て来ました」

言えば彼ががふっと笑う。

「なにそれ」

「………無一郎くんはふろふき大根が好きなの?」

何気なく聞いたつもりだったのに、彼が驚いた顔をする。

「何で知ってるの」

「夢の中で好きな食べ物を聞いて、今度作るって約束していたので」


夢なのに凄いね。なんて笑えば真剣な表情の彼が私を見つめる。

「それ、夢じゃないよ」

「えっ?」

夢じゃない?

「Aは僕に約束してくれた」

「………本当に?」

「だから元気になったら、約束通り…作ってよ」

夕焼けに照らされて赤く見える彼の顔。
照れ臭そうに視線を反らしている姿に何故か胸がいっぱいになる。

「う、うんっ…!」

頷けば少し安心したようにちらっと私を見た。

「やっと思い出してくれた」
「まだ、少しだけど…」
「ごめんね」

急に謝るものだから、良く分からなくて首を傾げる。

「え?」

「僕が判断を間違えたから、Aを危険な目に合わせた」

あの日の夜と同じ悲しい顔をして無一郎くんが言う。

「そんなこと…無一郎くんは私を助けてくれた。私のこと運んでくれた。お見舞いにだって毎日来てくれてるって、しのぶさんから聞きました。…私、ずっとお礼が言いたくて…」
「いいよ、感謝なんて。僕は一瞬でも君を見捨てようとしたんだから」

「え?」

それは、どう言うこと?

「本当はAと会う資格なんて無いのかもしれない。でも、そうしないのは僕のわがままだから…」

「無一郎くん?」

名前を呼べば、彼が立ち上がる。

「またくるね…」

私に背を向けて歩きだす悲しそうな背中に呼び掛ける。

「無一郎くんっ!…待って!」

けれど、彼は振り返ること無く去っていった。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時

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