文書071-3-9 ページ16
かつて接触感染型の疫病が流行っていた国で葬儀を執り行い、数多の懺悔と死を見届けた人形。
懺悔を聞いて死体を埋めて墓を作るだけの人形なのにも関わらず作成コストも非常に高く、
また稀有な存在であることから記録一つとってもままならない物でしたが。
｢ザンゲ、懺悔を―｣
真っ赤なベールに包まれて表情こそ読み取ることができませんが、聞き取れる大きさで機械的に繰り返しています。
間接部位と引きずられたシャベルは赤錆に染まりきり、
糸を編まれて作られた頭髪は絡んでほどけなくなっているあたり前回の記録から
相当年数を経ているようですが、未だに精神は擦りきれていないようです。
本来であれば彼女に称賛のあらしを贈ってあげたいところなのですが、
現状においては外敵でしかないというのはなんとも悲しいものです。
｢申し訳ないですが懺悔の心はどこかの世界に置き忘れてしまいました。私、後悔って言葉が大っ嫌いなんです｣
最高の笑みを作り出してプルトーネに言い放ちます。
彼女の逆鱗に触れないで墓を壊す方法は一つ、全てを否定することに他ならないでしょう。
それに私の過去に色々ありましたからね、それは嫌いになっても仕方ないでしょう。
｢墓、をそちらの、墓を―｣
プルトーネがシャベルを引きずり、やや不快で耳障りの悪い音をたてて歪な声帯から声をならします。
そちらの、というのはおそらくシャルドネのことでしょう。
私という存在に釘付けになっているかと思っていたのですが、失念しておりました。
｢ワタシ、別に懺悔も死もいらないのデスが｣
シャルドネが困ったように笑い、独特の雰囲気でプルトーネを視界に捉えます。
本能に働きかける不気味さ、とでも表現できるでしょう。
あるいは単純な不快感でしょうか。
ですが今彼女を否定するのは非常に良くありません。
｢アァ、あァ、いやぁ…！死ぬのでしょう？死ぬからこの街に来たのでしょう？｣
存在意義が否定されたときには、それを改めて作ることで自己整えるのでしょう。
支柱を保つためにはは別のものを支えにする、といった考えが近いです。
そして彼女の支柱というのは懺悔を聞き、墓を作ること。
…ないのであれば懺悔は要らず、ただ理不尽なまでに墓を作り続けるのが意義となるでしょう。
彼女がシャベルを両手ゆっくりと振りかぶり、私の頭蓋を割るために降り下ろそうとします。
ああ、哀れな人形に安寧を。
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菫青(プロフ) - 紫清さん» まず、この世界観に惚れてくれたことが作品の親として本望でした。彼女の在り方や文章は私の好みも含んでいたのですが刺さったということで大変嬉しい限りです。こちらこそコメント、ありがとうございました。 (2019年10月19日 20時) (
レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 急にコメント失礼します、偶然この作品を読ませて頂いたのですが、謎の多く少し不気味な世界観とそれを反映した文章、そしてダンタリオンさんの在り方に惚れました……！ これからも陰ながら更新楽しみにしております。素敵な作品、本当にありがとうございます。 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
菫青(プロフ) - シャル＠如月唯奈さん» 私個人の趣味を大きく詰め込んだ設定、文章でしたが読みやすいようで何よりでした。こちらこそ参加させていただきありがとうございます。 (2019年9月25日 20時) (レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
シャル＠如月唯奈(プロフ) - イベント参加ありがとうございます！早速読ませていただきました。文章も好みでとても読みやすかったです(^-^)この作品の設定もイイ(笑)更新頑張ってください！ (2019年9月24日 22時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菫青 | 作成日時：2019年9月21日 21時
