いいか、並森の風紀委員長は下手なホラーより怖いぞ ページ9
携帯を歩きながら操作する。
やっているのは当然、ゲームだ。
俺は携帯を二台持っている。
ゲームや連絡などの簡易的な使用物。
もう一つは、亡くなった両親の形見とも言えるもの。
俺の両親は既に亡くなっており、事故と聞かされたが傷痕がどう考えようと他人に付けられたものなので真相は闇の中だった。
｢さぁて、地獄の始まりだな。あいつが何時勘づくか。そして俺が逃げられるか。そこが問題だ｣
学校が見えてきた辺りで止まり、もう一つの携帯を取り出す。
そして手練れた操作で起動する。
幾つものアプリが纏められ、ソシャゲと書かれた物をタップする。
｢…どーれーにーしーよーうーかーな｣
なにかあったがもう既に忘れ、屋上へ向かう。
｢はぁー…｣
走って到着した屋上で、乱れた呼吸を落ち着かせる為、座り込んで深呼吸をする。
その後落ち着き直し、入り口の裏へと回る。
そこから数時間、イヤホンを付けてゲームに没頭していた彼女を現実に戻したのは、ドアの開く音だった。
｢…うっわ。｣
音なく入ってきた人物を見ては、小声で本音を漏らす。
｢委員長、居ないの解ったね｣
俺が委員長と呼んでいる人物。
それは並盛中学校の風紀委員長、雲雀恭弥。
原因としては俺が元風紀委員(強制)だった頃の呼び名が、未だに抜けきらない事が八割。
残りの二割は単純にそれ以外じゃ呼びにくいからかもしれない。
｢風紀委員が見回り来るの今日だったか？｣
嫌そうな顔のまま気付かれないよう呟く初音。
｢…そこ。逃げるな｣
どこまで地獄耳なのか、雲雀が呟き、俺の方へ向かっていく。
反射的に固まってしまう。
(どんだけ地獄耳なの。ああ、見つかれば戦闘ルートまっしぐらねえ…じゃないよどんな死亡フラグだ！)
内心愚痴を繰り返しながら物音ひとつ立てずに合わせて動く。
止まれば止まり、動けばそれに合わせて動く。
ここまで来れば補正ありとは言えども、暗殺者並だ。
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作者名：菫青 | 作成日時：2019年9月18日 19時
