やめろ、その攻撃は俺に効く ページ45
下ろしてくれたので道を先導し、ビルこと桃巨会に凸りに来ました。
｢やっぱり怖い…｣
ツナが階段を見上げて呟いた。
｢怖じ気づくな、怖いと思った時点で負けなんだよ｣
ディノさんは一応冷静になってくれたので、責任もって入ろうと思います、この節はごめんなさいと心の中で謝っておく。
大惨事になっていないことを願いながら扉を開けると、そこにはビフォーとアフターな感じもない。
ボロ雑巾のごとく投げ捨てられたり首締められかけたりしているヤーさんに荒れ果てた部屋。
いったい修理費はいくらになるのだろうかと内心呆れてしまった。
｢いくら黒めのヤーさんといってもこれは…うん。君ら、ちょいと節度守ったらどうだ？｣
首を掴んで叫ばれている被害者1号が憐れになってきたので声をかける。
｢…氷上？｣
｢いえぁ。ネトゲとPCでしか生きることのできない林檎大好きクズ人間こと氷上初音ですのん｣
自虐たっぷり真顔を添えて、空気を読まず茶化すように言い切る。
日陰者だったとしても陽の者にたいしてこのノリはかなりキツイのも事実。
さあ俺を褒め称えたまえ。
｢そこでひとつ良い情報を｣
…というのはともかく、自分の蒔いてしまった種を回収するためフォローに回る。
｢何だよ｣
｢ツナだったら無事で｣
｢なっ！？｣
｢倒してるっ！？｣
俺の言葉を遮り、背後から(結構)大きな声が飛んでくる。
自分泣いていいっすか？
心折れちゃって良いよね。
離れた壁際で正座し、静かに傷つき溜め息をつく。
傷ついたのもあるけど疲れたってのもあるんだよね、全力だすとか死んじゃうし。
引きこもりのタマシイってのは砕けやすいんだよ、lv1しかないんだよ。
ガラスが大きく砕けるおとがした。
顔をあげてみると被害者1号、食器棚にゴールインしちゃってますねｸｫﾚﾊ。
｢…大丈夫か？｣
｢あー、うん。平気…平気だから。格好つけようとして失敗したとかそういうのじゃないから…うん｣
山本が声をかけてきたので下手くそな誤魔化し、口からで任せで言う。
ネトゲなら挽回どころかこんなミスも無かったと思うんだ、だから現実(リアル)は馴れない。
｢じゅ、十分格好良かったぜ？｣
情けないね、気遣ってもらっちゃってさぁ。
｢そう？さっすが俺！うんうん、元気でた元気でた！ありがとね山本！｣
明るい言葉を繰り返して無理矢理自身を鼓舞し、山本には全霊の笑顔で返す。
ご生憎様、空元気は特技だからね。
俺は格好つけられない宿命でも宿ってんのかよ→←理論に基づいたので罪悪感はないっす
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作者名：菫青 | 作成日時：2019年9月18日 19時
