僕に構うのはもったいないよ? ページ25
というかこの感触。
「ん、あー、ディノ兄、フード下ろした?」
軽い発声練習をしてから無意識的に感じ取った疑問を呟いた。
微妙な沈黙が続く。
俺の髪色変わっているから普通に嫌なんだよね。
だってあまりにも染めてるかどうかきかれるから地毛証明書発行したくらいだし。
「降ろした」
沈黙を破り、ディノさんが正直な事実を言った。
「よしぬっ殺す」
いつもの調子と軽口が戻ってきた。
涙を軽く拭い、手を掴んで睨みつつ見上げる。
顔が赤いのは切れてるせいだよな?
まさか雑種に尊いとかそういう感情抱いてるわけじゃないよな?
冗談とかはよしこさん切れるぞい。
「初音ちゃんのお兄さん付けとか帰国する前以来だな。その調子でおじさんも前の呼び方に戻ってくれよ〜」
ロマさんまで茶化しながら頭を撫でてくる。
いや、長い知り合いだとしてもこんなのに構うとか聖人か。
というか待て、前の呼び方?
「ディノさんにロマさん、俺ディノさんのことなんて呼んでた?」
己の持つ最大限の勇気をもって地雷原に特効しにいく。
声が震えてるのは耳の錯覚に違いない。
「ディノ兄」
「だな」
「え…マジ?」
「おう、マジもんのマジだな」
みるみる内に顔に熱が集まっていく。
兄呼ばわりとかもうしないと思ったのに、無意識に幼児退行とか馬鹿に違いない。
「クズな上にメンヘラついてそんでもってディノさん傷つけようとするわ周りに迷惑かけるわで救いようねぇなもう…いやほんとすまん」
立ち上がり、愛するPCの前に座り、自己嫌悪に陥りながらぶつぶつと自分に向けて文句を言う。
短期の並森区域における犯罪予見スレを建て、エプレの名を使い情報を求める。
たしか潰すべきマフィアがあったはずだから、取り敢えず活動場所と名前から。
素早くタイピングし、求めている情報を書き込んで閉じる。
「ディノさん、ロマさん。ちと待っててくれ。詫びするわ」
「おい待て今何書き込んだ」
「んとね、内緒だ内緒」
そう言い残して部屋を出て、階段を降りていく。
一段、また一段と降りていくごとに冷静になり、ますますさっきのことがわけわからなくなる。
自分が自分じゃないような感覚は、鎖を創れるようになってから度々起こっていて、
大体は俺に害をなすものとか本当に傷つくものとかに対してだった。
ただ今回は違う。
まあこれも俺が情緒不安定の言い訳に過ぎないんだしいいか。
リビングに戻り、冷蔵庫の扉を開ける。
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作者名:菫青 | 作成日時:2019年9月18日 19時