別々の空 - Yuta.Kishi -

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無事にテストを終えて


クラスにいる人は帰る準備をしている





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「なぁ。」





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少し甲高い声が私の耳に入り


左隣を見ると永瀬くんは私に言った





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「Aさんに校舎案内してくれやん？

って先生に頼まれたんやけど。」





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転校初日で友達もいない私は


ここで永瀬くんと仲良くなる絶好のチャンス





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でも、もし


優太が私の立場なら？





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自分の知らないところで


異性と仲良くしてたら？





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少なくともいい気はしない





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ばかな私でもわかる





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永瀬くんの親切心は嬉しいけど





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『えっと、私なら大丈夫だから...。』





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気持ちだけ受け取っておこう


そう思ったのに





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「明日移動教室とかあるけど場所分かるん？」





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『...お願いします。』





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日常生活に支障をきたすわけにはいかない





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優太には少し悪い気するけど


優しいからちょっとはわかってくれるはず...





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というか嫉妬とかしない、かな？





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「ほら、行くで？」





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鞄を手に持って


スタスタと廊下へ向かっていく永瀬くんの後を


慌てて追いかけた





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「この教室はー、よう化学の実験で使うねん。」





「ここ、音楽室。」





「この学校の伝説のメロンパン売ってるとこ！

はよ買いに来なすぐなくなんで！」





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静かに後ろをついて行く私をよそに


何故か楽しそうに学校を紹介する永瀬くん





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「一通り案内し終わってんけど、」





『ありがとう。』





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そう言って


靴箱へ向かおうとする永瀬くんを


私は引き止めた





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私には


どうしても知りたい場所があったから





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『誰も来ないような、

静かなところってある？』





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不思議そうにする永瀬くんは


うーん、と真剣に考えた後





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「あ。」





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そう言ってさっき通ってきた道を引き返した





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「ここやったらあんま人来やんかも。」





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連れてこられたのは


校舎裏にある少し広い空間だった





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