【原神】恋に落ちたその日から【ディルック】 (ページ10)

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監察者ページ10

重い足取りでエンジェルズシェアに向かったAは扉を開ける。

カランカラン…とベルが響いた。

カウンターにはオーナーのディルックがいるだけであり、他に客らしい者は見当たらない。

『えっと…蒲公英酒を一つ。』

「それ程気を使わなくて良いよ。これは僕から。」

そう言うとブドウジュースを差し出すディルック。

Aが無理をしてお酒を頼もうとしていた事を分かっていたようだった。

『あの…早速ですがお話というのは。』

「君はもう、分かっているんじゃないか。」

Aは心臓が止まるかのように身体が硬直した。

もしやついに神である事がバレて……

「君は、昔僕を助けた地下情報網の監察者だろう。」

Aはその言葉にコップを置く。

『地下情報網の監察者…？』

Aはその言葉に首を傾げた。

『地下情報網の事は存じ上げておりますが私ではないかと。』

「忘れる訳がない。」

ディルックは真っ直ぐAを見た。

「初めて、いや、ここで再会した時にすぐ分かった。」

Aはディルックを見上げる。

「身に纏う空気に見覚えのある格好をしていれば誰でも分かる筈だ。それに昨夜の剣筋…あれは僕が生死を彷徨った時に救ったものと同じだった。」

Aはその言葉にはっとした。

地下情報網の監察者。

確か昔金欠だった時に誘われて一時期やっていた。

そんな偶然はあるのだろうか。

いや、あの日もAは昨夜と同じように好奇心でついていった者が瀕死の状態だった為助けた。

あれは昔旅をしていたディルックだったのか？

『…まさか。』

Aは思いもしなかった出会いにくしゃりと笑った。

『私てっきり…ディルックさんは覚えてらしたのですね。』

Aはあの時、怒りを渦巻き闘うディルックに興味をそそられたのだった。