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気まずさ ページ23

『あ、ディルックさん…』



宿の扉を開けるとディルックが柱にもたれて立っていた。



「じゃあ僕はこれで!」

『バル…じゃない、ウェンティ!行かないで…!』

「頑張ってねー!」



すぐに行ってしまったバルバトス。

残った2人は沈黙であった。

するとディルックが口を開く。



「…久しぶりだね。調子はどうかな。」

『まあまあ、です…』



Aはディルックの目を見て話せない。

数日経つだけでこんなにもよそよそしくなってしまった。



「大事な話があるんだ。ついてきて欲しい。」



大事な話…?



『はい。大丈夫ですが…』



するとディルックは歩き出す。

Aは少し後ろに下がってついて行った。







木が生い茂る中、小鳥のさえずりが聞こえる。

だいぶ歩いてきたがまだ続くみたいだった。



「あの時、君は言ったね。正義は時に牙を向き、争いの元となると。」

『言いましたっけ…?』



ディルックは出会った時の事を話し出す。



「ああ。だが君はこの後こう言った。自分の信念を信じ続ける事が生きる希望になる。死に急いではならない。自分の少ない生を己の信念を貫き通して生きなさいと。」

『確かにそんな事言ってましたね。』



Aは苦笑する。



「僕はその言葉で道を正せたんだ。自分のやるべき事が明確になった。あの時は一つの事しか頭になかったからね。」



ぽつりぽつりとディルックは過去を話し出した。

Aは静かに聞く。

ディルックの悲しい過去に、Aは呟いた。

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作者名:きの | 作成日時:2022年6月8日 22時

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