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八十三粒 ページ44

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急いで来た道を戻った。






まだもりさんは同じ場所にいてくれた。







「もりさん」









彼を呼ぶ声が少し震えている。
緊張が滲み出ていた。








少しの間沈黙が流れる。







ふぅ…








こんな風に誰かと言い争いなんてしたことがなかった。
言い争えてたかはわからないけど。





こうやって関係を私から修復しようとするのも初めてだった。







私はもう一度自分を落ち着かせてから口を開いた。







「あの…「ごめん」








でもそこに彼の言葉も重なったのだ。







「え?」
「あ…」








しかも謝罪の言葉。







わけがわからない。
なんで謝られたのかさえわからずに私は彼の言葉を待った。









「…あの、先に言うね」






凄く申し訳なさそうに、彼は話し始めた。








「うん、ちょっとね、すごく不安になってしまって。




つい、吐き出しちゃって。





その、不安にさせたよね、ごめんね。






傷つけちゃって。





本当にごめんなさい。







屁理屈みたいなこと言ってごめんなさい」








違う。

いや、そうじゃない。







「あ…あの、違うんです」







謝って欲しくなくて思わず否定した。


私は彼に謝って欲しくてここに来たわけじゃないんだ。







「その、傷つけられたとかじゃなくて。



言われたことが図星すぎて、なにも言い返せなくて。


悔しくなって逃げちゃったんです」








俯く彼は、うん、とまた寂しそうに言った。






ああ、これも違う。






これじゃあなーくんじゃない彼を否定していることを認めているみたい。






今まで建前だけで生きてきた私が、ちゃんと自分の本音を伝えるんだ。
心臓が張り裂けてしまうほど大変なことだと思う。




でも、ちゃんとケジメをつけるから。








"良いリスナー"なんかじゃない私を見せたら引かれてしまうかもしれないけど。




そうなったらそれまでだ。







もう関わらずにひっそりと応援しよう。









「そう、私、期待してたんですよ。


あなたがななもり。さんだったらいいなって」






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しゅうく(プロフ) - ゆにぃさん» ありがとうございます(´;ω;`)やっと幸せにまとまりました…! (2020年3月17日 23時) (レス) id: 547af1fa67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆにぃ - え、泣きました() (2020年3月17日 20時) (レス) id: 68d7e1f8f1 (このIDを非表示/違反報告)
しゅうく(プロフ) - ハルカさん» わー!ごめんなさい…こんなシリアスシーンに…ご指摘ありがとうございます! (2020年3月14日 20時) (レス) id: 547af1fa67 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - すみません私も誤字してしまいました (2020年3月14日 20時) (レス) id: 796bfd041b (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 誤字です痛いところを疲れた思った となってます さっきなんて、なんで となってます (2020年3月14日 20時) (レス) id: 796bfd041b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しゅうく | 作成日時:2020年2月19日 23時

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