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紫「逃げんでもええやん。」
『い、いや、あのー…べ、別に逃げようとしてるワケでは…』
「なぁ。」
『はぃっ!?』
「…昨日のことやけど……」
コンコン!!
なんだか緊迫した雰囲気のところへ、突然鳴り響いた無遠慮なノックの音。
少し驚いた様子の紫耀くん。
一拍置いてから溜息混じりに足を進め、細くドアを開ける。
途端に、たくさんのドヤドヤとした黄色い声が飛び込んで来る。
「一緒に部屋飲みしませんか!?」
「研修終わったら東京で飲みましょうよ!」
「連絡先教えて下さい!」
「彼女いたりします?」
「実は結婚してるとか!」
紫「いやぁ〜…どれも無いけどぉ…」
チラッとベッドに腰掛ける私を見る紫耀くん。
いつもなら私が間に入って話を有耶無耶にするところだけど、今日は他の人に「夜同じ部屋にいた」と思われたくなくて、プイッと顔を背けてしまった。
だって、本当は自分でどーにかできるんでしょ?
そー言えば永瀬も最初に言ってた。
「紫耀は俺とは比べものにならんぐらい女慣れしとる」って。
しらんぷりしたままそっぽを向いていたら、10分ほどの攻防の末にやっとのことで女の子たちを帰した紫耀くんが、疲れた顔でドアを閉めるところだった。
やっと終わったか。
…さて。
そろそろ充電も少しは溜まって…
紫「せぇーんぱぃっ」
『はぃっ!?』
紫「…何、勝手に帰ろうとしてんの?」
充電中のスマホに手を伸ばしたまま、ビクッとベッドの上で飛び跳ねる。
『…いやっ…!
も、もう充電大丈夫かなー…って!』
紫「もう俺のこと、守ってくれへんのや。」
『…必要ないもん。』
紫「…そんじゃあさぁ…」
紫耀くんが、ベッドに両手と片膝をついていた私の背中をトン…っと押した。
『…きゃ!』
そのまま前のめりに倒れ込む。
頭が真っ白になり、危険を告げる警告音だけが耳の奥で鳴り響いている。
紫「今度は自分のこと、守ってみれば?」
私のことを、冷たい笑顔で見下ろす紫耀くん。
その後ろの窓から見えるのは
暗い空の中で鋭く光る、まるで刃物のような
上向きの三日月。
目の前の、見たことの無い人から
よく知った香りがするのは
なんでなんだろう。
ぼんやりとしていたら
やはり見覚えのある、厚みのある手が
ゆっくりと私のところへと
伸びて来るのが見えた。
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きのこ(プロフ) - まるこめちーはさん» おはざす!朝4時コースから6時間ほど経ちましたが、黒目ありますか?大丈夫でしょうか?こちらで圧倒的人気だったマスカレード優太、流されるままにメインで書いたら今度はそっちのサブのMJが強くて半泣きです。 (2020年2月10日 10時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
まるこめちーは(プロフ) - おばんです。……三人目は間違いだったようで。………きのこさん、私、四人目だったみたい!笑 岸!きし!!KISHI〜〜!!!笑 とりあえず、朝4時コース行って参ります。あざす。 (2020年2月10日 2時) (レス) id: d33d16680a (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - れみさん» はじめまして!わぉ!数日で全作読破ですか!?すごい、ありがとうございます!わずかにしか存在しないキュンや切ないも拾ってもらえて嬉しいです(^^)この先、ほぼ強制的に書くことになった岸くんルートが始まる予定ですので、またよかったら覗いて下さいヽ(´▽`)/ (2020年2月4日 18時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
れみ(プロフ) - きのこさんはじめまして。数日前にきのこさんの作品を見つけて読み出したところあまりの面白さに全作読みこんでしまいました。笑えてキュンとできて切ない描写もあったりで、本当に面白いです。これからの作品も楽しみにしております。 (2020年2月4日 16時) (レス) id: bcf67d4572 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - まるこめちーはさん» 目も手も忙しそうなママライフですねww最後だけ本気の皿洗いが出て来たの笑いましたww家事育児の息抜きに、きのこ特製のきしひらをエンジョイしてもらえたら嬉しいです(^^)とりあえず私は末っ子の筋トレは参加ではなく近くでひたすらシャッター切りたいと思います。 (2020年1月31日 22時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きのこ | 作成日時:2020年1月24日 17時