P・A・R・A・D・O・X【SHO】

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岸「……◯◯の受注、取ったんだ。
すげーな、平野。あそこまだ取引始めたばっかで、結構ハードル高いのに。」




『ホントにすごいです。
企画自体も面白かったですけど、なんか人の目を惹くオーラみたいなのがあるんですよね…。
天性のものなのかなぁ…。』




独り言のような私の呟きに、岸先輩が少し困ったように微笑む。

そしてフィッとパソコンの方へ顔を逸らすと、



「もうさ、いんじゃね？」



と、躊躇いがちな声を出した。






『？？何がですか？』





岸「…お世話係。
アイツもう、1人でも十分動けるじゃん。」





『うーん、まぁ確かに。
でも伝票処理とか請求書発行とか、そっちがまだちんぷんかんみたいなんですよ…。
締日1回しか経験してないんで、仕方ないんですけどね。
なので、せめてもう一回ぐらいは見てあげないと。』



岸先輩はパソコンの画面の方を向いたままだったけど、すぐに気を取り直したように明るい声を上げた。




岸「……そっか、そだな！
期待のエースなんだから、丁寧に育てないとな！」





いつもの笑顔に戻ったかと思うと、改めて仕事に取りかかり始めた岸先輩。



私も自分のパソコンに向き合って手を進めていたら、報告を終えた紫耀くんが戻って来た。






『おかえり！報告終わった？』





紫「うん！めっちゃ喜んでくれたで！
あ、あと研修のことも言われた！」





『え？研修？…京都の？？』





紫「そぉ！俺とA先輩の2人に決まったって！！よろしくね！！」





にっこりと笑う紫耀くん。

そのど迫力笑顔にやっぱりちょっと押され気味になりながらも、「そっかぁ、よろしくねぇ！」と、参加が決まって安心した声を出した。





そして隣の席では





あれこれと研修の話を始めた私たちのことを




岸先輩が、難しそうな顔でじっと見ていた。

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