いつかのあの抱擁 ページ32
＊
袴は土埃ひとつ付いていない
しかし 7日間は川に入って身体の汚れを落とす日々だった
俺は早く湯浴みがしたい
疲れ切った体に鞭を打って屋敷に帰った
『…ただいま帰りました』ﾎﾞｿ
夜ももう遅い
極力音を立てないように戸を開け 静かに帰りを告げた
師範…父上はきっと任務に出ているだろう
瑠火さん…母上は千寿郎と眠りについているだろう
杏寿郎も…鍛錬の疲れで寝ているかもしれない
体力が限界を迎えて玄関に座り込み
支給された隊服を抱え込んだ
頭の上には蕎麦粉丸が乗っている
『姉さん…
もう少し 生きてても良いかな…俺のこと 恨んでるかな？
お父さん…お母さん……妹も…
俺…生きてるよ…鬼を倒す組織に入隊したんだ
元凶を討って…これ以上 哀しむ人が出ないように…
俺…あの頃より強くなったよ……
見ててくれてる…？』
ﾄﾞﾀﾄﾞﾀﾄﾞﾀ
「焦凍‼」
「怪我はありませんか⁉」
「兄上〜‼」
全員が普段は立てないような
慌ただしい足音を立てながら走ってきた
『お…』
座り込んでいる俺に杏寿郎が飛びついた
頭を撫でながら走り寄る両親に目を向けて ギョッとした
『父上 母上…その目元の隈は如何されたのですか
任務が多忙だったのですか
千寿郎が夜に泣きましたか
今夜はもうお休みください、早くお部屋に…
杏寿郎…お前も部屋に…』
そう 言葉を続けようとしたが
父上と母上に杏寿郎ごと抱き締められた
「無事で…良かった……」
「よく…無事で帰って来てくれました」
2人の肩は震えていた
まだ1年や其処らしか共に過ごしていない俺を…
こんなにも心配してくれている
『俺は…元気ですよ』
「あぁ そうだな」
「…蕎麦を用意してます。先に湯浴みを済ませて来なさい」
「母上 お手伝いします！」
そんないつも通りの会話をする家族を見て
帰って来たんだなと実感した
玄関に置いていた隊服を持ち直した
「焦凍…」
『…はい？』
「「「お帰りなさい」」」
『ｯ！』
姉さん、守ってくれてありがとう
お父さん、お母さん、育ててくれてありがとう
妹…守れなくて済まない、俺の妹に なってくれてありがとう
俺は 煉獄家の一員として…鬼殺隊として生きていきます
見守っていて下さい
もし 俺が死んだときは…
暖かく迎えてくれると嬉しいです
『…はい ただいま帰りました』
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ゆぎ(プロフ) - 雨色の水滴さん» ありがとうございます！頑張って考えた甲斐がありました。他の話も書いてるので是非！これからも応援よろしくお願いします!! (2021年6月9日 2時) (
レス) id: 0bf1aaca6b (このIDを非表示/違反報告)
雨色の水滴 - 轟君かっこよすぎー！！後、技名のセンスが凄いです尊敬します。（真顔） (2021年6月8日 20時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぎ(プロフ) - とこよさん» いや…ちゃんと見たらアレで良いんでした…水の呼吸の横水車的なくくりです。 (2021年4月18日 23時) (レス) id: 0bf1aaca6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆぎ(プロフ) - とこよさん» あ"！ホントだ…ありがとうございます！気づかなかった… (2021年4月18日 23時) (レス) id: 0bf1aaca6b (このIDを非表示/違反報告)
とこよ - 陸ノ舞の後にある、銀世界・告鳥って〇ノ舞とかつかないんですか？ (2021年4月18日 9時) (レス) id: 1a67d02ee8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆぎ | 作成日時：2020年5月27日 14時
