狗巻棘の犬

犬３８匹 ページ39

.



今日は最後のお見合いの日



棘くんはとりあえず忙しいのは今日までだろう



私はまだまだやることが残っているので、

報告会が終わるまでの辛抱だ



.


棘くんを着付け係の人に渡して、

私は先に相手の方に挨拶しに行く


『本日はわざわざ遠くからお越し頂き

誠にありがとうございます』


「いえ、こちらもこのような機会を頂けたこと、

感謝致します」



今まで会ってきた人の中では

とても好印象な人だった



.




棘くんが来るまで相手の方と2人きりだった


「あの、」

『あ、はい。どうかされましたか?』



気を使わせてしまったかな、と内心焦る



「その、女性が従者だなんて珍しいな、と。

それに私と年齢も差ほどないように感じます」





嫌、だろうか


今後結婚するかもしれない相手の従者が女性なのは


歳も差ほど変わらないのは気になるだろうか




『そうです、ね。女性が従者は珍しいですよね』

『齢は16でございます』



「そうなんですね」




ただそれだけの会話で、その後棘くんがやって来た




私はいつものように

襖越しに2人の会話を聞き、

視覚を共有する犬を出しその見合いの様子を見ていた






.





帰って報告書をまとめている時

今日のお方の声音がとても綺麗だったと補足で書いた



あまり意味は無い



けど、とても綺麗な声音だった



風鈴の音がチリンと鳴るような

透き通った綺麗な声音







今日の方が棘くんの結婚相手だったらいいなと、

少し潤んだ目を擦った





とても、お似合いだったんだ









.

犬３９匹→←犬３７匹

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す