53 ページ3
「ていうかこんなの売ってないで俺らと遊びに行かねぇ？」
ワゴンの前に立って3人の男性に、道行く人もチラチラとコチラを見ては目を逸らして去っていく。
『あの、他の方の迷惑になるので…』
「ケーキ何個買ったらお姉さん付いてくる？」
まじ？そんなシステム？と下品に笑う人達に先日腕を掴まれた記憶が少し蘇る。
『っ…』
迷惑です。と言えばいいのに、怖くて思わず一歩下がった。
店内に逃げ込もうか。
でもケーキもお金もここに置きっぱなしにはできないし。
そんな考えが浮かんで、どうしよう。と思っていると、後ろから扉が開く音がした。
「買う気ねぇなら失せろ」
その言葉と同時に抱き寄せられた肩にその人物を見上げると、ギロッと男性たちを睨みつけるワカさん。
ここに来る前に話していた声より低く、笑っていた顔と違ってまるで獲物を狩る獣のような目をしたワカさんに、男性たちはそそくさと去っていった。
『あ、ありがとうございます』
「…んな格好で1人で売ってたらこんな目にもあうわな
それにかなり冷えてる」
風邪ひくぞ。と言いながら店内に連れ戻そうとするワカさんに、ダメだと言えば、店内にいるベンケイさんに顎を上げて何か合図をした。
すると勢いよく開いた扉から店長が出てくる。
「Aちゃん！大丈夫だった！？
ごめんね！今Aちゃんの保護者の人から教えてもらって！」
ベンケイさんは私の保護者になったらしい。
今日はとりあえずこの後店長と2人で売り切る事にして、明日はちゃんと考える。と言う事に落ち着いた。
これ着とけ。と肩にかけられたワカさんのロングコートを着て全て売り切ったのは、21時になった頃だった。
ケーキを売り切ったから帰っていいと何度も謝りながら言ってくれた店長は、自販機で買ったホットコーヒーを私たち3人にくれて、家までそれを飲みながら歩く。
「明日も今日みたいな形で売るのか？」
お父さん心配なんだけど。と言いたげな顔で聞くベンケイさんに、多分2人体制か、入り口のドアは開けっぱなしで。と答える。
「明日は俺ら頼まれてねぇけど、誰が来るかわかんの？」
『んー、誰だろ』
「いつもどうしてんの？」
『いつも学校終わる時間とか、バイトの時間はココに連絡して』
「ココ…あー、九井の嫁？」
ぽんと掌に拳を乗せて、納得。と言う顔をしたワカさんの言葉に、顔から湯気が出るほど熱を持った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 462人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉兎(プロフ) - えりちゃんさん» 初めまして！コメントありがとうございます☺️ なんと2回目！楽しんでもらえて嬉しい限りです！！ これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします！✨✨ (6月15日 11時) (
レス) id: 51ccdf4ac7 (このIDを非表示/違反報告)
えりちゃん - はじめまして☺️実は読ませてもらうの2回目なんですが､きゅんきゅんが止まりません！毎日の楽しみになっています💕 (6月15日 2時) (レス) @page7 id: 84c92b84c7 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 香恋さん» コメントありがとうございます！ はじめまして☺️ 中毒症状出ましたか〜夜更かしまで😂😂 嬉しいコメント励みになります✨ありがとうございます🥰 頑張ります！！💪 (2023年1月29日 20時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - はじめまして！一昨日この作品を見つけて、テンポも良いし面白すぎて読むのが止まりませんでした！読む手が止まらなくて中毒症状出ました笑。面白い展開と文才の凄さに夜通し読んでしまいました！更新楽しみにお待ちしてます😭 (2023年1月29日 13時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - れなさん» コメントありがとうございます！！✨ 嬉しいお言葉感謝感激です！！🥳 地道に下書き進めてますので少しお待ちください！よろしくお願いします☺️ (2023年1月24日 22時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玉兎
| 作成日時：2022年10月28日 18時
