君と描く物語１２

＃５５９ ページ9

面談が終わり、美術室で作業を始めてから暫く…

今日の面談は私が最後だって言ってたのに、先生顔出すの遅いな
資料まとめたりしてるのかな？

でも普段なら、ここに持ってきて資料整理とかするのに……

まさか母と二人で話しているとも知らず、そんな事を頭の隅で考えながら手を動かす


ｶﾞﾗｧ

A｢…！お疲れ様です｣

天元｢………ん、お疲れ様｣

A｢…？｣

やっと姿を見せた先生に声を掛けると、少しの間を置いてから小さく返事をしてくれて
そのまま教卓の席に座り資料を広げ出す

天元｢…｣ｶｻｯ

A｢…｣

何だろう…先生の様子が変……？
なんて言うか、心ここに在らずと言うか…

A｢…先生、何か…ありましたか？｣

天元｢……え？…あぁ、悪い…ここ最近ばたばたしてて、ちょっとぼーっとしてた｣

A｢大丈夫ですか…！？｣ｶﾞﾀｯ

天元｢いや、そんな大袈裟なもんじゃねぇよ…っ｣

A｢でも…｣

最近ずっと私の実技の勉強、マンツーマンで教えてくれてるし…
それ以外にも受験生の学年担任なんてやる事沢山あるだろうし


ｶﾀｯ

天元｢本当に大丈夫だから…な？｣ｽｯ

A｢…っ｣

先生が大変な事に気付けなかった自分を攻めていると、私の目の前まで来て安心させる様に先生の暖かい手が頭を撫でた

A｢……はい｣

久々だ、この温もり……
今はもう…少し切ないその懐かしい体温

それなのに、今でもこんなに私を安心させてくれるなんて


先生は今だってこうやって、私に沢山の物をくれるのに…私は先生に何も返せない

恋人としても、生徒としても…何も返せない……
悔しいな…


A｢…取り乱してすみません……作業に戻ります｣

何も返せないなら、せめて…これ以上 先生に迷惑かけないように……｢A…(天元

A｢…？はい…｣

俯いて居ると、先生の声が私の名前を呼んで視線をあげると

天元｢…俺は、Aが無事に夢を叶えてくれれば…それで十分なんだ

その夢に向かって一緒に戦えてる事が嬉しい

…だから、そんな顔すんな。もう十分過ぎるくらい沢山貰ってるよ｣

そう言って柔らかく笑うその目元は、いつかに見た私を好きだと言ってくれた笑顔に良く似ていて


A｢…っ///｣


ずるいよ、先生……
そんな顔して笑うなんて



嫌でも忘れさせてなんかくれないんですね…


貴方を好きな、この気持ちを




やっぱり私は……

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