君と描く物語１２

＃５６７ ページ17

頼みがある…
そう告げた有一郎くんは、真剣な眼差しで私を見る

有一郎｢あいつは…無一郎は頑固で我儘で子供っぽくて、こうと決めた事は簡単に曲げないし

その癖 ひねくれた所もあって、多分 先輩と付き合ってるって噂も
わざとそんな噂が流れる様に あいつ自信がそう仕向けたんじゃないかって思うくらい 悪知恵働かせる様な面倒くさい奴で…｣ｽﾞﾊﾞｯ

A｢…！？｣

どんな言葉が発せられるかと構えて待っていれば、聞こえて来たのは容赦無い言葉達で戸惑ったけど…

有一郎｢……だけど、あいつは芯が強くて負けず嫌いで…大切な物を大切だって言える良い奴なんです

兄の俺が言うのも何ですけど、本当に…凄く良い奴なんです｣

A｢……うん…｣

有一郎｢だから…俺の大切な弟と…弟の想いに、最後まで向き合ってやって下さい…｣ｽｯ

A｢…有一郎…くん…｣

私に向かって深く頭を下げて言うその覚悟と…
無一郎くんを想う気持ちの暖かさに言葉が詰まった

有一郎｢無一郎が貴方に向ける想いと、貴方が無一郎に向ける想いが違うのは分かってます

でも…それでも無一郎の事を大切だと言ってくれて
あいつも自分の気持ちに向き合おうとしてる

こんなの我儘だって、俺も無一郎もちゃんとわかってます

でも叶わないと分かっていても、最後まで足掻かせてやって欲しい…
無一郎が初めて心を許した貴方との時間を…悔いの残る時間にだけはさせたく無いんです

だからあいつと一緒に居る時は、後ろめたさとか申し訳ない気持ちとか抱かずに
ただ純粋に、無一郎の事を見てて貰えませんか…｣

同時に生まれ、双子として生を受けた二人だけど…
数分でも…数時間でも…先に生まれた有一郎くんは、しっかりお兄さんなんだね…

こんな風に、知らない所で自分の為に頭を下げてくれる存在が居るって…本当に幸せな事だよね……

A｢頭を上げて、有一郎くん…｣

私の言葉に、有一郎くんはゆっくり顔を上げる

その表情は正に弟を想う兄の顔をしていた

A｢私も…有一郎くん達家族には及ばないけど、この三年間で沢山の無一郎くんを見て来たと思ってる

そのどれもが、私にとって無一郎くんを大切な存在だと思わせてくれる出来事で…

……私も、ちゃんと無一郎くんと向き合いたいって思ってるよ

だから……有一郎くんの頼みも、必ず守ってみせる｣

有一郎｢……ありがとう…ございますっ｣

そう言うと有一郎くんは安心した顔で、無一郎くんに良く似た笑顔を見せてくれた

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