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-田んぼの見える丘・side 絢子-
先生と並んで座っていると、先生が話し始めた。
丈一郎「先生もさ、好きな子おってん」
絢子「･･････どんな人だったんですか？」
丈一郎「文芸部の人」
絢子「文芸部･･････？」
丈一郎「向こうも好きやったみたいで、両思いやってん」
絢子「･･････」
丈一郎「意を決して告白しようとした日、別の子が俺のことを好きやって言った。みんなの見とる前で」
絢子「それって･･････」
絢子「2人の女の子が、同じ部員を好きになってしまったの」
絢子「⋯⋯」
丈一郎「俺そんとき何も言えんくってさ。後悔した。その日から2人の女の子たちはギクシャクするようになって。原因を作った俺に、部長は退部して欲しいって」
絢子「⋯⋯」
丈一郎「唯一の楽しみやった部活もなくなってさ、よくここでぼーっとしてたんよ」
絢子「きっと･･････辛かったですよね」
丈一郎「部長がさ、その後俺に謝りに来てくれてん。『私が間違ってた』って。でも俺も意地はって戻らんかった。戻りたなかった」
絢子「あたし、その部長さんと同じことを」
丈一郎「責任を感じて、部長はその後すぐ部を辞めた」
絢子「そんな」
丈一郎「部長は優しい人やったんよ。今の部長と同じで」
絢子「･･････」
丈一郎「きっと部長の、そういうところに惚れたんよなぁ」
絢子「･･････！」
丈一郎「悪かった！」
頭を下げる藤原先生。
丈一郎「生徒の気持ちが分からん顧問でホンマにごめん！」
絢子「･･････」
丈一郎「Aのことも･･････岡田がしっかり者やから甘えててん。でも決して、みんなのことをないがしろにしてたわけとちゃう」
絢子「･･････頭、あげてください」
丈一郎「部長は岡田しかおられん。これからも部長として、みんなを引っ張ってくれるか？」
絢子「先生･･････こちらこそ、これからもよろ
しくお願いします！」
そう言って、私は頭を下げた。
思いが溢れそうになったのを、必死でこらえた
1人丘に佇んでいる。手には短冊。短歌を書く。
『目に映る夏の香りのこの景色十八の君思い馳せらむ』
もどかしくて、くすぐったい。満たされてて、少し寂しい。昔の人が歌を詠んだときも、こんな気持ちだったのかな
顔を上げ、景色を眺める。
絢子「同い歳のあなたと、同じ景色を見られてるだけで、あたしは十分です」
照れて笑う絢子。
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作者名：Cornet | 作成日時：2021年11月6日 1時
