Page.12 ページ12
･
テーブルの上に置かれる容器。
蓋をあけると、中にはふわふわのパンケーキ。
晴留「美味しそ〜！」
大吾「どーぞ、食べてください」
晴留は迷いなく、部長と有薫は戸惑いながらも食べた。
晴留「んっ！」
有薫「ふわふわですね！」
絢子「美味しい･･････口の中いっぱいに広がる甘みと、噛む力に一切逆らわない柔らかな生地。まるで幸福そのものを食べてるみたい」
大吾「西畑家名物、ふわふわパンケーキ。コツはメレンゲをしっかり泡立てることです」
あたしは隠し持った原稿をこっそり見る。
『彼のパンケーキは、部員たちを虜にした』。
A「･･････」
大吾「食べへんの？」
A「あ･･････」
晴留「ちょっとA！こんなときまで読んでんの？ごめんねこの子小説バカで」
A「小説バカじゃないもん」
話を遮るようにパクッと食べる。
大吾「･･････どない？」
A「おいしい、です」
西畑大吾と目が合うと、西畑大吾は嬉しそうに笑う。あたしは目をそらした。
大吾「ほんで、男子の僕は文芸部に入れるんですか？」
絢子「！？」
大吾「部屋に入ろ思ったら聞こえてもうて」
部長は晴留を見て。
絢子「どうして、文芸部に入りたいの？」
大吾「？小説が好きだからです」
晴留「どんなのが好き？」
大吾「わりとなんでも読むかな」
絢子「ここは本を書く部話だけど」
大吾「･･････中世ヨーロッパのお姫様を守る騎士になったことあります？」
絢子「？何言ってるの？」
大吾「殺人事件を解決する探偵は？」
絢子「あるわけないでしょ？」
大吾「僕、いっぱいあるんです。探偵だったりボクサーだったり貧乏な哲学者だったり。あと女の子だったこともあったし。夢なんかな？わからへんけど、誰かの記憶を自分の記憶みたく思い出すことがあって」
A「･･････」
有薫「前世みたいな？」
その言葉にあたしは昨日の万年筆をそっと隠す。
大吾「前世言うと、ぼんやりした記憶やろ？僕のは映像が思い浮かんでくる感じ。なんかリアルすぎて、本当の僕がわからんなる」
A「･･････」
大吾「最初は怖かったんです。自分って何者なんやろって悩んでました。でもあるときふと、これって小説みたいだなって思ったら、すごい気が楽になって」
絢子「だから本を？」
大吾「はい。僕じゃない僕の記憶とか感情を、物語にしたいんです。してあげたいんです」
A「･･････」
晴留「部長、どうすんの？」
絢子「･･････」
A「･･････あの！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 124人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Cornet | 作成日時：2021年11月6日 1時
