解熱 ページ7
起きたら加藤さんはもういなくて、玄関にはきっちり鍵が閉まっていた。
本当に都合のいい夢だった。
熱を測ったら昨日より上がってた。
そりゃそうだ、ってちょっと苦笑する。
スマホを見たら、加藤さんからメッセージが来てた。
熱が下がってないから起きられるようなら病院に行くことと、館長には連絡済みだから今日もゆっくり休めってことが書いてあった。
夢だったはずなのに、ってちょっと泣きそうになる。
寝てる間に私の耳で熱測ったのか?意味わかんない!
あと館長になんで加藤さんが連絡してんの。
メッセージには「すみません」って返事した。
しばらくすると、私のメッセージは無視した形で、ついでみたいに作り置きのごはんを説明するメッセージが入った。
冷蔵庫を見たらお野菜のスープが入ったティファールが真ん中に鎮座していて、その下の段にはカットしたフルーツが何種類か置いてあった。
ラップをめくって、緑のキウイを指でつまんで口に入れた。冷たくて美味しい。
タクシーで病院に行って、お薬もらって帰ってきたら結構しんどくて、また横になった。
寝ても寝ても眠れちゃう。
夢も見ずに眠った。
次に目を覚ましたら加藤さんがキッチンでカタコト音をさせていて、思わず「えっ」て声が出た。
私が声をあげたことに気づいて、加藤さんが体温計を持ってベッドの方にきた。
すごい汗とかかいてるのに!やめてほしい!
「なんで薬飲まないの?」
「えっ」
「もらったことに満足してんじゃないよ!飲みなさいよ!」
病院から帰ってきて、そのまま寝ちゃったんだった。加藤さんが用意してくれたいろいろも、キウイしか口に入れてなかった。
加藤さんはベッドのそばにどすんと座って、横になったままの私のおでこに手のひらをのせた。やめてほしい。
……今日の私、まだ「えっ」しか言ってないな。
「……こんばんは」
「はいどうも」
このタイミングじゃ、ちょっとおかしいかなって思いながら挨拶したら、加藤さんがちょっと笑いながら返してくれた。
「熱測ってみる?なんか昨日より熱くない気がする」
体温計を手渡されて黙って検温。
なんとなく思ってはいたけれど、やはりもう熱はなかった。
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ぺんぎん(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございます。お話の中の一人一人が丁寧に描かれていて、ほんとうにほんとうに素敵です。これからも応援しています。 (2020年3月4日 1時) (レス) id: f15aa4c564 (このIDを非表示/違反報告)
すもも - 完結おめでとうございます!いつもこっそり拝見しておりました(笑)じぇにさんの作品はどれもひらがなと漢字の使い分けが絶妙で、ニュアンスがとっても丁寧に伝わってくるところが大好きです。新たなじぇにさんの作品に出会える事を願いつつしばらくこの作品に浸ります。 (2020年1月28日 23時) (レス) id: 7bc6073c03 (このIDを非表示/違反報告)
もか - いつも楽しく拝読しております!主人公ちゃんの不安や怖がりな部分と、それでも弱いだけだったり気持ちが揺らいでるわけではない芯の強い部分がようやく報われたような気がして、このまま幸せになってほしいと感じました、、これからも楽しみにしています! (2019年12月28日 0時) (レス) id: 729ed0c340 (このIDを非表示/違反報告)
あやぽにょ - やっとですね(;_;)よかった、、、! (2019年12月18日 1時) (レス) id: f2bcd42dc1 (このIDを非表示/違反報告)
yume.(プロフ) - 初めまして、いつも楽しく読ませて頂いてます!増田くんのストーリーから読んでいて、この物語は主人公ちゃんの名前を若菜にして読んでるのですが、加藤さんの幼馴染の名前を自分にしたくて名前の設定を増やして貰えませんでしょうか、、、? (2019年12月15日 19時) (レス) id: 28edb9fce5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◯じぇにー◯ | 作成日時:2019年11月5日 21時