君のことが… (ページ3)

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2020年、オリンピックが近づく東京都では、世界中から大勢の観光客の来日に備え、テロ対策の準備に追われていた。
　彩希たちが通う陵南高校はオリンピック会場に近い距離にあり、何度も避難訓練が行われていた。

　授業中の2年1組の教室に入った岡田奈々は教員に怒られたが、特に悪びれる様子もなく、ため息交じりに自身の席に着席した。

「おはよ、なぁちゃん」
「美音、おはよう」

　席に着いた奈々に、前の席に座る向井地美音が体を向け彼女に話しかけた。

「遅刻常習犯になりつつあるね」
「違うよ、今日はホントはギリギリセーフだったんだって！」
「じゃあ何で遅れちゃったの？」
「"優等生"に捕まっちゃって…」

　奈々は最前列に座り、真剣に授業を聞いている彩希の後ろ姿を、睨むように見た。

「あ～…、ホント仲良いね、二人とも」
「どこが！？いっつもいっつも私を見る度、ガミガミ言ってうるさいんだけど！」
「まぁまぁ。"喧嘩するほど仲がいい"って言うでしょ」
「聞いてる？私の話…」

　美音の言葉に首をかしげながら、奈々は机に頬杖を突き、左横の窓の外の景色を眺めた。