始る春 ページ4
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「……(げっ、めんどくせぇ奴いるじゃん、マジかよ)。」
教室の扉から顔を覗かせた日下部先生が、私を見て頭を掻いた。
数回掻いたところで、心底ダルそうに廊下を指さして言った。
「あー……千尋A、伏黒が探してたぞ」
「「「(言わない方がめんどくさくなりそうだったんだな)」」」
「……はい、すみません」
日下部先生も私を嫌っている呪術師の一人だ、たぶん。そんな顔してる。
私も、私を嫌っている人に好感は持てない。
少し居心地が悪くなった。
伏黒恵にも怒られたくはないし。
「おかか」
棘が前髪を整えてくれた。
「私行きます。お騒がせしました」
「おう、またな」
「恵になんかされたら言うんだぞ」
「なんかって何ですか?」
「いろいろだ」
「?……わかりました」
「高菜〜」
手を振る棘に軽く手を振り返して、2年生の教室を後にした。
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ガラ……
「……。」
元居た教室の扉を開ければ、さっきとは打って変わって我関せずという顔で本を読む伏黒恵。
なんだ、探してたっていうからどこいってた!とか問い詰められるかと思った。
そっと自分の机に着けば、同時に授業開始のチャイムが鳴った。
まあ次は五条先生の授業だ。
あの五条先生が時間ピッタリ来ることはないので、ゆっくりと次の授業の準備に取り掛かろうと横のカバンに手を伸ばす。
「……悪かった。」
「ふ、は、え?」
え。今謝られた。何故。逃げ出したのは私の方だ。
「なんだその反応」
「あ、いやその。私の方こそ、突然走り出して……」
自然に、素直に……
思っていることを言えばいいのだ。
「あの、尽くして(?)下さって、ありがとうございます」
「……千尋お前ど、2年の先輩のとこ行ってただろ」
あれ、怒った?
「あと敬語辞めろ」
「は、はあ……」
「千尋」
「なん……なに」
伏黒恵が、私を見た。
でもそれは、1週間前までのあの冷たい目じゃなくて。
「何かあれば俺を頼れ、ここにいる」
それだけ言って、何もなかったかのように伏黒恵はまた手元の本に目を落とした。
心臓がドキドキと脈打った。
(な、なんなの……)
二人の間にそれ以降会話はなかったけれど。
それでも、その沈黙は少しだけ。
あたたかかった。
やっぱり。
最近の伏黒恵は変だ。
第1章
始る春
ーSTART-
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早瀬モモコ(プロフ) - リリリンゴさん» リリリンゴさんコメントありがとうございます!とても励みになります!更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!! (2021年10月16日 21時) (レス) id: 8442258d5b (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年10月13日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
リリリンゴ - シリーズ最初から読みました!面白いです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年10月13日 2時) (レス) @page6 id: 5191a43a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早瀬モモコ | 作成日時:2021年10月12日 1時