無情にも追い越してゆく ページ30
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壱馬の後に続いて教室を出ると、廊下には慎と樹もいた。二人とも一瞬微笑んでおはよう、と挨拶をしくれたっきり、誰もいない資料室に行く間何も話さなかった。
三人が揃いも揃って、一体何があったんだろう。それにしても、最近こういう状況になること多いかも。誰かを呼び出したり、呼び出されたり。
慎｢ごめんね、急に。｣
｢ううん。けど、どうしたの？みんなして。｣
樹｢ちょっとその、話したいことがあるんだよね。一応知っちゃってる俺達三人で話した方がいいかなって。。｣
｢はなし？｣
壱｢あんま良い話ではないんやけど。｣
慎｢…俺昨日、知り合いに頼まれて合コン行くって言ってたじゃん？それでまあ、行ったんだけどさ。…北ちゃんの彼女が、いて。｣
｢え、合コンに？｣
慎｢俺の事知ってて、それで話し掛けてきて、合コンなんかに来てるから最初は人違いかなって思ったけど、でも多分、…絶対本人。｣
樹｢彼氏もいないし、出来たことないって慎に話してたって。｣
｢そっか。｣
彼女が合コンに出入りしてるなんて、普通知ったら相当ショックだろうし腹が立つんだろうけど、今の僕には全くそんな感情がなく、もはや他人事のような感覚だった。
そういえば一年の頃、友達と話す彼女の口から幼馴染達がどうとか、慎や樹、壱馬の名前とか、選べないだとか、そんなことを聞いたことがあった気がして、だから慎のこと知ってたのか、なんて考える余裕すらあった。
壱｢彼女のことはよく知らんし、俺達にとっちゃ北人が大事やから、これは正直に話すかってなって。｣
｢そうだったんだ、ありがとう。何かごめんね、変な気使わせて。｣
慎｢そんなことはないけど、…もしかして北ちゃん、無理、してる？｣
｢いや、無理してないよ。｣
樹｢…違ったらごめん、なんか全然平気そうに見えるっていうか、｣
｢ああ、…うん。実は僕、もう別れるつもりでいたんだよね。｣
樹｢え、そうなの！？｣
｢そう。週末会って伝える予定で。だから、うん。全然平気っちゃ平気、かな。｣
壱馬以外の二人は、目を丸くして僕を見た後、喜んでいいのかどうか戸惑っている。
きっと相当考えて伝えることを決めてくれただろうから、そんな時間を使わせて申し訳ないけど、僕の中では悲しみなんて微塵も感じない。
寧ろ内心、何で？って聞かれた時の材料として充分効力あるな、なんて考えてしまっていた。そんな自分を悪い奴だなと思いながら。
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作者名：noa | 作成日時：2021年2月22日 17時
